2003 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体の特殊磁束フロー状態の精密観測とテラヘルツ帯電磁波発生への展開
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15740208
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
内藤 智之 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助手 (40311683)
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Keywords | 酸化物高温超伝導体 / 混合状態 / 磁束状態 / 相転移 / 磁束フロー |
Research Abstract |
酸化物高温超伝導体の超伝導は2次元的なCuO_2面が担うため、その結晶構造に起因した大きな超伝導異方性を有する。磁場中の超伝導状態、いわゆる混合状態において超伝導体中に侵入した磁束も印加磁場と超伝導面の配置に依存した異方的な振る舞いを示す。本研究では、傾斜磁束状態におけるこの異方性に起因した特殊な磁束系相転移及び磁束フロー状態を観測することを目的とした。実験にはYBa_2Cu_3O_<7-δ>(YBCO)単結晶を用いた。酸素欠損量δを精密酸化熱処理を行うことにより調整し、超伝導転移温度が90K級の90K相試料および60K級の60K相試料を用意した。傾斜磁束系の相転移(静的)およびフロー状態(動的)を明らかにするために、磁束に働くローレンツ力が異なる2つの配置、面内抵抗率および面間抵抗率の測定を行った。その結果、まず傾斜磁束系の相転移は、印加磁場とCuO_2面のなす角と有効質量モデルを用いて見積もられた実効磁場でよくスケールされることが明らかとなった。一方、本研究で着目しているCuO_2面の面内異方性を取り入れた実験から、CuO_2面からわずかに磁場が傾いた領域ではジョセフソン磁束系が生き残っている可能性を示唆する結果が得られた。このことは、ジョセフソン磁束フローを用いた電磁波発振が90K相YBCOでも可能であることを意味している。また、低印加電流の場合、面内および面間抵抗率には大きな差違は観測されなかった。一方、60K相試料においては、ロックイン転移領域を外れた直後の極めて狭い角度領域においてジョセフソン磁束系の寄与のみでは説明できない傾斜磁束系の転移が観測された。これはジョセフソン磁束系とパンケーキ磁束系が共存するいわゆる交差磁束状態が比較的異方性が小さい物質でも実現している可能性を示唆する結果である。
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Research Products
(1 results)