2003 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノチューブに内蔵された水分子のダイナミクスの核磁気共鳴による研究
Project/Area Number |
15740220
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松田 和之 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (60347268)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 核磁気共鳴 / 水分子 / 吸着 / 液体固体相転移 |
Research Abstract |
単層カーボンナノチューブ(SWNT)バンドルに吸着された水分子のダイナミクスを核磁気共鳴(NMR)およびX線回折実験により調べる研究を行った。直径が1.34nm付近に分布をもつように直径制御されたSWNTバンドルに水分子を吸着させた試料を作製し、吸着した水分子の^1H核のNMRスペクトルの温度依存性を測定した。NMR測定に用いた直径1.34nm付近のSWNTでは、ナノチューブ内部に吸着された水は高温ではアモルファス状態であるが、220Kで相転移が起き7員環の環状氷"アイスナノチューブ"が形成されることをX線回折実験により確認した。吸着水分子からのNMR共鳴線は、バルクの水の液体-固体相転移温度273Kでは異常を示さず、室温から220Kまでの温度領域で非常に鋭い共鳴線(半値全幅約5kHz)が観測される。この結果は、水分子の運動による共鳴線の先鋭化が起きていることを示している。この観測された共鳴線幅は、水分子が固体格子点で自由回転運動だけをしている場合の理論値よりも小さい。X線回折実験ではチューブ内部の水は220K以上では固体なのか、または液体なのかは不明であったが、NMR測定の結果はチューブ内部の水分子は併進運動をしており、"液体状態"にあることを示している。また、NMR信号強度は低温になるにしたがって核磁気モーメントのキュリー則に従い増大するが、220K以下で一部の信号成分の線幅が増大するため、信号強度が顕著に減少する。この温度は、X線回折実験により確認した7員環アイスナノチューブが形成される相転移温度に一致している。この線幅が増大する信号成分は、ナノチューブ内部の水分子からの信号と考えられ、220以下で水分子の併進運動が凍結しアイスナノチューブが形成されたことを示している。一方、220K以下でも先鋭化を起こしている信号成分は、150K以下で急激な線幅の増大を示す。このNMR信号はバンドル表面などのナノチューブ内部以外に吸着した水分子からの信号と考えられる。このような水は、低温まで液体状態を保ち、150Kで液体-固体相転移を起こすことが明らかになった。
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[Publications] Y.Maniwa, H.Kataura, K.Matsuda, Y.Okabe: "A one-dimensional Ising model for C_<70> molecular ordering in C_<70>-peapods"New Journal of Physics. 5. 127.1-127.5 (2003)
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[Publications] K.Matsuda, Y.Kohori, T.Kohara, H.Amitsuka, K.Kuwahara: "The appearance of homogeneous antiferromagnetism in URu_2Si_2 under high pressure : a ^<29>Si nuclear magnetic resonance study"Journal of Physics : Condensed Matter. 15. 2363-2373 (2003)
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[Publications] M.Abe, H.Kataura, H.Kira, T.Kodama, S.Suzuki, Y.Achiba, K.Kato, M.Takata, A.Fujiwara, K.Matsuda, Y.Maniwa: "Structural transformation from single-wall to double-wall carbon nanotube bundles"Physical Review. B68. 041405(R)-1-041405(R)-4 (2003)