2005 Fiscal Year Annual Research Report
中緯度大気海洋系の大規模変動:力学的メカニズムと予測可能性
Project/Area Number |
15740284
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡部 雅浩 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 助教授 (70344497)
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Keywords | 大気海洋結合モデル / 中緯度大気 / ストームトラック |
Research Abstract |
中緯度大気海洋系の自然変動およびその予測可能性の探求を目的とする3ヵ年計画の最終年度である。本研究の中核をなす、中程度の複雑さをもつ大気海洋結合モデルを用いた数値実験は昨年度のうちにほぼ終了し、500年の結合標準実験およびその実験から得られる気候値の海面水温を与えた大気モデル実験を比較し、大気海洋結合の効果が気候平均場および長周期気候変動へ与える影響が明らかになった。結合効果として、海面熱フラックスが気温・海面水温変動を抑制する過程を弱める、いわゆる"reduced thermal damping"に加え、海面風応力の変動が風成循環のスピンアップ・スピンダウンを通じて西岸域の海面水温を変え、それが大気循環を変えるという大規模フィードバックが同定された。この結果は、中緯度西岸域の海面水温(太平洋ならば日本東方沖)が大気海洋相互作用の鍵領域であること、さらには風成循環変動の指標となる季節水温躍層の監視が、10年規模の気候変動の予測に有益である可能性を意味している。上記の成果は論文としてまとめられ、近日中に投稿予定である。 中緯度大気海洋系の自然変動を理解するのに最も重要なのが、海面水温変動に対する大気の応答過程の解明である。中緯度大気変動の主要な部分は、いわゆるストームトラックが主体的に関わっているので、研究当初から用いてきた線型大気モデルに総観規模擾乱と大気長周期変動の相互作用を組み込むことを試みた。この成果は既に印刷中である(Jin et al.2006ab)。また、海面水温偏差を強制源として線型モデルによる定常応答を求めると現実の大気長周期変動をよく再現できるが、そのためには高解像度のモデルに対する効率的な行列解法が必要である。これは昨年度の懸案課題であったが、今年度新しい行列解法を提案することができ、これも投稿論文がまもなく受理される見込みである。
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Research Products
(4 results)