2004 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋における底・深層循環とそれに伴う熱・物質輸送に関する数値実験的研究
Project/Area Number |
15740291
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 潔 東京大学, 海洋研究所, 助手 (20345060)
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Keywords | 斜面 / 密度流 / 傾圧不安定 / 海底境界層 |
Research Abstract |
大陸棚斜面等の海底斜面上を流れる密度流の振舞いとそれによる海水輸送過程において、特に緯度(コリオリパラメータ)に対する依存性についての理解を大きく進展させた。すなわち、近年、全球的な海洋大循環モデル研究においては海底斜面上を沈降する底層流の効果を適切に考慮して深層循環を正しく再現することが強く要請されており、大循環モデルに取り込むための様々な海底境界層(BBL)モデルが提案されているが、それらは必ずしも十分に完成されたレベルに達しているわけではない。問題点の一つは、それらのうちの多くは底層流の振舞いが緯度(コリオリパラメータ)にどのように依存するのかについて十分検討されていないままにパラメタライズされている点にある。高緯度域と低緯度域で密度流が全く同じ物理過程で斜面を沈降するかどうかについては自明ではない。そこで、本研究では非静水圧(静水圧近似を用いない)3次元プリミティブモデルを用いて、東京大学情報基盤センターのスーパーコンピュータを使用しながら数値実験を行い、底層密度流の緯度依存性について調べた。 モデルの格子間隔は水平400m×200m、鉛直約6mである一方、モデル全体の空間スケールは水平約100km×50km、鉛直約1kmであり、こうした高分解能性を有するモデルとしては他に類を見ない大きさである。実験では斜面上方境界に密度流を駆動する負の浮力フラックスを課しながら、斜面傾斜が急な場合(S=0.03)と緩やかな場合(S=0.005)について、コリオリパラメータを変えることでケーススタディを行った。その結果、不安定波が微小振幅のとき、同じ緯度上で比較すると斜面傾斜が急なケースの方が不安定波の発達は早い。これは斜面傾斜が急なほど有効位置エネルギーが増加する(等密度面の傾きが急になる)ためである。一方、緯度に対する依存性については、急斜面・緩斜面のどちらの場合でも高緯度のケースほど微小振幅波の成長は早い。その理由は一般にコリオリパラメータが大きいほど傾圧不安定波の成長率が高いことに加えて、本実験では有効位置エネルギーも増加するためと考えられる。すなわち、高緯度のケースほど沖向きの海底エクマン輸送が小さいので、斜面上部での基本場の等密度面の傾きが急になる。その後、不安定波が有限振幅に達すると、渦による効果的な沖向きの海水輸送が行われる。他方、有限振幅期における高密度水の輸送効率に関しては、微小振幅時における不安定性のような単純な依存性は示さないようである。これらの結果は、2005年度日本海洋学会春季大会において公表予定であるとともに、現在、国際学術誌への論文投稿についても準備中である。
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Research Products
(1 results)