Research Abstract |
激しい衝撃変成を受けた石質隕石中では,その主要構成鉱物である斜長石の一部が固相のまま非晶質化していることがあり,衝撃スケールの重要な一指標となっている.これまでは,衝撃回収実験のみ基づき非晶質化の圧力が見積もられてきた.しかし,衝撃実験における圧力保持時間はマイクロ秒であり,天然の隕石母天体(数秒程度)と比較すると極めて短い.したがって,相転移に必要な時間が十分与えられず,非晶質化圧力が過剰に評価されている可能性がある.本研究課題では,圧力保持時間をより長くとることのできる,ダイヤモンドアンビルセルを用いて斜長石の室温化49GPaまでの静的高圧実験を行い,回収試料の構造を,ラマン分光,及び透過電子顕微鏡を用いて検討した.出発物質としてNa : Ca=99:1,及び89:11の斜長石粉末を用い,非晶質化圧に対する化学組成依存性も検討した. その結果,静的圧縮による斜長石の非晶質化圧力は,1)衝撃実験に対してわずかに低圧(〜2GPa)であり,時間依存性はさほど大きくないこと,2)衝撃実験同様Na/Ca比が増加するほど高いこと(Na : Ca=99:1で37GPa,Na:Ca=99:1で34GPa)が明らかになった。しかし,本研究は室温での高圧実験であるため,高温下での相転移の活性化も考慮すると,非晶質化圧力はさらに低下する可能性が高い.現段階では予備的考察ではあるが,天然の衝撃変成では,普通コンドライトが経験したピーク圧力は30GPaを大きく超えない,と考えられる.これまで,斜長石の非晶質化を一つの基準として,強い衝撃変成を受けたコンドライトは45-90GPaの圧力を受けたと考えられているが,今回の結果から,このような圧力は過剰に見積もられている可能性が高いと考えられる。温度効果を検討するために,高温下での斜長石の静的圧縮実験を今後進めていく予定である.
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