2004 Fiscal Year Annual Research Report
極限高速吸収分光を用いた分子内プロトン移動におけるコヒーレント核運動の観測
Project/Area Number |
15750019
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
竹内 佐年 独立行政法人理化学研究所, 田原分子分光研究室, 先任研究員 (50280582)
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Keywords | プロトン移動 / 振動コヒーレンス / 時間分解吸収分光 / フェムト秒パルス / ベンゾキノリン / ポンプ・プローブ法 / 誘導放出 / 低波数振動 |
Research Abstract |
10-ヒドロキシベンゾキノリン(10-HBQ)の分子内プロトン移動についての実験を進めた。10フェムト秒パルスを用いた二色ポンプ・プローブ分光の結果、反応に関与する励起状態の吸収および誘導放出信号には振動コヒーレンスに由来するビートが観測された。このビート信号には4つの低波数成分が含まれているが、これらが分子のコヒーレント振動に直接対応するものであるかどうかは自明ではない。この点を明らかにするために、まずビート信号の励起波長依存性の実験を行った。吸収スペクトルの短波長側(360nm)と長波長側(385nm)を光励起した場合のビート信号を高い時間分解能(27fs)で観測し比較した。フーリエ解析の結果、励起波長の違いに依らず低波数成分は4つであり、それらの周波数は一致していた。この結果は各低波数振動の倍音系列がコヒーレントに光励起された場合に相当し、ビート信号として観測される低波数成分は10-HBQ分子のコヒーレント分子振動に直接対応しているといえる。特に最も低波数のモード(242cm^<-1>)は他の3モードに比べ位相緩和が速いことから反応による分子構造変化(反応座標)との関係が興味深い。そこで電子基底状態分子のラマンデータおよび密度汎関数法による計算との比較をもとに帰属を試み、242cm^<-1>モードは基底状態において243cm^<-1>に観測される全対称振動に対応するモードであると一意に帰属することができた。この242cm^<-1>モードの振動形(核の動き)はOH基全体がN原子側に大きく変位するとともに、分子全体が反応サイト(-OH N-部分)に向けて面内で変形している。この核の動きは酸素・窒素原子間の距離を近づけるもので、プロトン移動をより容易にする動きといえる。この意味で、10-HBQのプロトン移動反応で観測されたコヒーレント核運動は反応座標との相関の強い振動モードと考えられる。
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Research Products
(3 results)