2003 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒時間分解光電子画像観測法による水和電子の研究
Project/Area Number |
15750021
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
西澤 潔 独立行政法人理化学研究所, 化学反応動力学研究室, 研究員 (50280730)
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Keywords | 水和電子 / 液体分子線 / 流動電位 |
Research Abstract |
真空中に噴出した水の液滴中に捕捉された水和電子の励起状態における超高速緩和過程の機構解明を目的として研究を行った. 今年度は,真空中において液滴を生成するための液体分子線源の開発・設計・評価を行った.液体分子線は,極めて微小な穴(オリフィス)から液体を高圧で押し出すことによって得ることが出来る.本研究では,直径10ミクロンの穴を持つ,電子顕微鏡用の絞りをオリフィスとして用いた.また,液体を高圧で押し出すポンプとしては,高速液体クロマトグラフィー用の送液ポンプを用いた.約8MPaの圧力で液体をオリフィスから押し出すことにより,液体分子線を得ることができた.分子線の下流では,流体力学的な不安定性の作用により連続した分子線流は寸断され,液滴を得ることができる.ところが,この方法で得られる液体分子線および液滴は,外部から電荷を供給していないにも関わらず,帯電していることがわかった.これは,液中で電離平衡を形成しているイオンの一方が,オリフィス部位において電気二重層の形成に利用された結果現れる界面動電現象(流動電位)によるものである.この帯電による流動電流値は,液体の流速の平方根に比例するので,流動電流値測定から液体流の速度の安定性,つまりはポンプの高圧下での送液安定性について評価することができた.一方,この電気化学的過程による液体の帯電は,液滴への電子付着・水和電子生成過程においてクーロン力による影響を与えるため,この帯電を除く必要がある.現在,オリフィスに外部から電位を与えることで,この電気化学的帯電を除き,電気的に中性の液滴が生成できるか検討中である.
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