Research Abstract |
双環構造を有するトリシランユニットを構成単位として用いて,立体配座がオールアンチに制御されたペンタシラン(aa-Si_5),オクタシラン(aa-Si_8)をモデル化合物として合成し,それらの構造解析ならびに物性測定をおこなった。X線結晶構造解析により,得られたオリゴシラン類におけるケイ素主鎖中のSiSiSiSi二面角は全てほぼ180°であることを確認し,当初の予測通り本ユニットが主鎖を完全オールアンチ配座に制御するためにきわめて有用であることを確認した。また,溶液中でのUV吸収測定の結果,ペンタシランaa-Si_5は吸収極大λ_<max>=253nm(ε40,000)と,立体配座が制御されていないペルアルキルペンタシラン(n-Si_5Me_<12>,λ_<max>=250nm,ε20,000)に比べて極大波長はほとんどかわらないものの,吸光係数がほぼ倍増していた。また,オクタシランaa-Si_8は吸収極大λ_<max>=288nm(ε85,000)と,ペルアルキルオクタシラン(n-Si_8Me_<18>,λ_<max>=273nm,ε30,000)に比べて長波長かつ強い吸収を示した。さらに,温度可変UV吸収スペクトルを測定した結果,オクタシランaa-Si_8の極大吸収波長はほとんど変化しないものの,吸光係数εが200,000と,大幅に増大することも明らかとなった。MCD(磁気円二色性)スペクトル測定結果を併せると,ペンタシランaa-Si_5は構造が強固にオールアンチに固定されているのに対し,オクタシランaa-Si_8では室温溶液中では多少の立体配座の乱れがあるものの,やはり主鎖がオールアンチ構造のものが大多数を占めていることが明らかとなった。 以上のように本研究では,オリゴシランの立体配座をσ共役の拡張に有利な完全オールアンチ配座に制御する方法の開発に成功した。
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