2003 Fiscal Year Annual Research Report
高スピン縮合多環炭化水素の合成と磁気的相互作用に関する研究
Project/Area Number |
15750034
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久保 孝史 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60324745)
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Keywords | トライアングレン / 基底三重項 / 合成 / 多段階両性レドックス / ESR / NMR |
Research Abstract |
分子内に二つの不対電子を有するトライアングレンに、嵩高い置換基を導入したヘキサ-t-ブチルトライアングレン1の単離を目的として、研究を行っている。現在、1の前駆体となるジヒドロ体2の合成単離に成功している。2を各種脱水素剤と反応させてビラジカルの発生を試みたが、水素原子が一つ抜けたモノヒドロモノラジカル体と思われるシグナルは確認できるものの、ビラジカル由来のシグナルは観測できなかった。また、光照射によるビラジカル発生を試みたが、モノヒドロモノラジカル体のみを与えた。 一方、トライアングレンはフロンティア軌道が非結合性であるため、各種酸化還元状態が容易に発生できると予想される。各種条件検討の結果、ジカチオン、モノラジカルカチオン、モノラジカルアニオン、ジアニオンの4つの酸化還元状態の発生に成功した。ジカチオンは、2とDDQとの反応で得られ、モノラジカルカチオンは2とp-クロラニルとの反応で得られた。また、ジアニオンは2をsuper baseで処理することにより得られ、モノラジカルアニオンはジアニオンをフェロセニウムで酸化することにより得られた。全ての酸化還元状態は室温でも安定に存在した。NMRを用いた電荷密度分布解析やESRを用いたスピン密度分布解析から、電荷やスピンはHMO計算で予想されるように、非結合性を反映する分布様式を示した。 現在、ジカチオンの単離を試みており、単離に成功次第、還元反応によりビラジカルの発生を試みる。
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