2003 Fiscal Year Annual Research Report
極低温マトリックス場を利用した不安定化学種の分子間応過程の追跡 -新奇反応中間体の検出とその反応性制御-
Project/Area Number |
15750040
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
犬井 洋 北里大学, 理学部, 助手 (20348600)
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Keywords | 極低温マトリックス分離分光法 / ナイトレン / 光反応 / 反応中間体 / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
光反応に介在する反応中間体の分子間反応性を調べることを目的として、極低温マトリックス分離分光法を用いて研究を進めている。平成15年度においては、まず装置の改良を行い、続いてナイトレンの酸素への反応性を調べた。前者においては、油拡散ポンプからターボ分子ポンプに交換することによりマトリックス形成部位のオイルフリーを実現した。また最少目盛0.0005Mpaの精密圧力計を真空ラインに取り付けることにより、マトリックスガスの正確な調整が可能になった。これらの改良により、厳密なる解析に耐えるスペクトルが測定可能となった。後者においては、p-置換フェニルレアジドから光化学的に発生させたナイトレンと酸素分子の反応過程を追跡した。5.0%の酸素を含むキセノンマトリックス(10K)中で発生させた三重項ナイトレンは、50Kへの昇温に伴い酸素分子と反応することが赤外分光法および紫外可視分光法による観測によりわかった。観測結果を、密度汎関数法による振動解析および酸素18を用いた同位体実験の結果に基づき解析したところ二種類のニトロソオキシド(cis、trans体)の生成が確認された。さらにこの化学種は波長依存的に、元のナイトレンへの逆反応(N-O結合開裂)や、ニトロ体とニトロソ体(O-O結合開裂)への変換反応を誘起することがわかった。観測された波長依存性を理解するべく、ニトロソオキシドの励起状態の計算を行ったところ、N-O結合開裂は最低三重項状態から、O-O結合開裂は第二励起状態から、それぞれ進行しているという結果を得る,ことが出来た。過去にナイトレンと酸素分子の反応過程をマトリックス単離法により直接観測した研究は二例しかなく、そのうち一報は紫外可視吸収スペクトルのみによる追跡である。本研究における芳香族ニトロソオキシドの検出とその波長依存的な分解反応の観測は初めてのことである。
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