2003 Fiscal Year Annual Research Report
気体分子の吸脱着に伴い,一次元構造が生成・消滅する,白金錯体結晶の物性評価
Project/Area Number |
15750051
|
Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
長澤 五十六 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (40302351)
|
Keywords | ナノワイヤー / 可逆的吸脱着 / 気体分子 / ビルディングブロック |
Research Abstract |
種々の三級ホスフィン配位子,dmpe,dppeを有する白金(II),パラジウム(II)及びニッケル(II)錯体を合成し,SO_2分子の吸着実験を行った。また配位原子にヒ素を有するニッケル(II)三級アルシン錯体を合成し,SO_2分子の吸着実験を行った。以下にそれら実験から得られた結果を示す。 1.白金(II)三級ホスフィン錯体,[Pt(dppe)_2]I_2結晶にSO_2を反応させると,SO_2の吸着現象が確認された。この結晶は大気中においてSO_2を放出する,可逆的な吸脱着現象が確認されたが,そのSO_2の放出速度は[Pt(dmpe)_2](ISO_2)_2錯体に比べ非常に大きかった。 2.パラジウム(II)三級ホスフィン錯体,[Pd(dmpe)_2]I_2結晶にSO_2を反応させると,SO_2の吸着現象が確認された。得られた[Pd(dmpe)_2](ISO_2)_2結晶の結晶構造を決定し,その構造的特徴を考察した。この結晶において,SO_2の吸脱着挙動による可逆的な一次元鎖構造の生成と消滅が確認された。この結晶におけるSO_2の放出速度は[Pt(dmpe)_2](ISO_2)_2錯体に比べ大きかった。これはI^-イオンとSO_2分子の相互作用が白金錯体結晶のものより弱いことに原因があると考えられる。 3.ニッケル(II)三級ホスフィン錯体,[Ni(dmpe)_2]I_2結晶にSO_2を反応させると,SO_2の吸着現象が確認された。この結晶は大気中においてSO_2を放出する,可逆的な吸脱着現象が確認されたが,そのSO_2の放出挙動は白金,パラジウム錯体結晶に比べ異なっていた。これは結晶中に化学的環境の異なるI^-イオンが2種存在することに帰因すると考察される。 4.ニッケル(II)三級アルシン錯体,[NiI(diars)_2]Iを合成し,同様のSO_2分子の吸着実験を行ったところ,SO_2の吸着現象は見られなかった。このことは配位子が有するベンゼン骨格が立体的に障害となり,SO_2の吸収を妨げたものと考えられる。
|