2003 Fiscal Year Annual Research Report
共鳴軟X線発光分光法による、半導体-吸着分子間の表面化学結合状態に関する研究
Project/Area Number |
15750067
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永園 充 京都大学, 工学研究科, 助手 (00346090)
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Keywords | シンクロトロン放射光 / 軟X線分子分光 / 固体表面 / 分子吸着 / 共鳴軟X線発光分光 / 半導体 / C6H6 / H2O |
Research Abstract |
本研究は、半導体基板上に簡単な分子を化学吸着させた系について、共鳴軟X線発光分光測定を行い、半導体-分子間の表面化学結合に関与する電子状態を明らかにし、同分光法の半導体上分子吸着系の化学状態分析手法として確立することを目指したものである。平成15年度は、Si(001)(2×1)表面上に、C_6H_6およびH_2Oを単分子層吸着させた系について、スウェーデン放射光施設Max-labおよびドイツ放射光施設BESSYで共鳴軟X線発光分光実験をそれぞれ行った。 C_6H_6/Si(001)系の炭素K殻吸収端微細構造(NEXAFS)スペクトルには、π^*、リュードベリ状態、σ^*_<CH>、σ^*_<CC>に帰属されるピークが観測された。それらのピークが示す励起エネルギーにおいて、Clsの共鳴軟X線発光スペクトルを測定した。観測されたスペクトルは、低エネルギー領域において、π^*共鳴励起を除き、ノーマル発光スペクトル(内殻電子をイオン化した時のスペクトル)とほぼ同じ構造を示したが、π^*共鳴励起では、非常に異なっていた。一方、高エネルギー側では、励起光とほぼ同じエネルギーを持った発光ピークが観測された。高エネルギー側のピーク強度は、π^*共鳴で非常に強く観測された。低エネルギー側のピークは、傍観型(スペクテター)発光過程、高エネルギー側のピークは、参加型(パティシペーター)発光過程に帰属された。ここで、参加型(傍観型)発光過程とは、内殻軌道から非占有状態に共鳴励起した電子が直接関与する(しない)発光過程をいう。π^*励起からの傍観型スペクトルが特異な構造を示すのは、内殻発光の遷移選択則により解釈された。さらに参加型発光スペクトルは、π^*共鳴励起を高分解能(100meV:振動励起状態が分離可能)の光励起したとき、振動励起状態の違いにより、発光スペクトルのピーク形状に変化が観測された。これは、振電相互作用による影響を示唆するものである。これらの結果は、日本放射光学会で発表を行い、Phy.Rev.Lett.誌への投稿準備中である。 C_6H_6/Si(001)系の共鳴軟X線発光分光実験は、現在データー解析中である。
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