2003 Fiscal Year Annual Research Report
ビニリデン遷移金属錯体を鍵中間体に含む触媒反応の新展開
Project/Area Number |
15750087
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福本 能也 大阪大学, 大学院・工学研究科, 講師 (50273595)
|
Keywords | ビニリデン金属錯体 / Tp配位子 / アセチレン / ヒドラジン / ルテニウム触媒 / ニトリル / アミン |
Research Abstract |
ビニリデン金属錯体は炭素-炭素-金属原子間がそれぞれ二重結合で結ばれた興味深い化合物である。この錯体は末端アセチレン類と種々の遷移金属錯体との反応により容易に生成することが知られている。そのため、ビニリデン金属錯体を鍵中間体に含む末端アセチレン類の触媒反応がいくつか報告されている。そのほとんどはアセチレン末端炭素への求核剤の位置選択的付加反応である。これはビニリデン錯体のα-炭素の求電子性に由来する。本申請者もルテニウム触媒存在下、末端アセチレン類とヒドラジンとの反応によりニトリルが生成することを見出し、すでに報告している(Organometallics 2002,21,3845)。本反応は求核剤としてアミンを用いた初めての例である。この反応では特にTpRuCl(PPh_3)_2錯体のみが有効であり、他のルテニウム錯体では低収率であった。その原因を解明するため種々のヒドラジンを反応に用いて検討した。基質は2-ナフチルアセチレンを用いた。まず1-アミノピペリジンを用いた場合、TpRuCl(PPh_3)_2触媒では2-ナフチルアセトニトリルの収率が90%であったの対し、CpRuCl(PPh_3)_2/NH_4PF_6系ではわずか25%であった。しかし1,1-ジメチルヒドラジンを用いると、CpRuCl(PPh_3)_2/NH_4PF_6系でも76%と大幅に生成物の収率が向上した。さらにこの反応系にピペリジンを添加したところ収率の低下が見られた。以上の結果より、TpRuCl(PPh_3)_2錯体以外の金属錯体で収率が低いのは、副生するアミンが反応を阻害しているためであり、アミン類との反応にはTp配位子が有効であることがわかった。今後はこれらの知見を基に、種々のTp配位子を有する錯体を合成し、アミン類を含む触媒反応へと展開する予定である。
|