2004 Fiscal Year Annual Research Report
金属カルベノイドの実用的発生法と精密有機合成への応用
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15750090
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
櫻井 英博 分子科学研究所, 分子スケールナノサイエンスセンター, 助教授 (00262147)
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Keywords | 金ナノクラスター / 空気酸化 / 有機ホウ素化合物 / 水中反応 / サイズ依存性 |
Research Abstract |
昨年度の研究で、安価で入手容易な亜鉛粉末を用いた、カルボニル化合物からの簡便な亜鉛カルベノイド活性種の生成方法について報告した。そこで、今年度の研究においては、他の金属カルベノイドも、同様に入手容易でかつ操作が簡便である金属単体から直接調製できるかどうかについて検討を行うこととした。その結果、貴金属のカルベノイド調製を試みる検討において、その発生源として金属ナノクラスターの利用を目指したところ、金クラスターがこれまでにない反応性を示すことを新たに見出した。 ナノメートルサイズの金属クラスターはバルク金属とも単核金属錯体とも異なる特性を示すことから、従来にない触媒の開発が期待される。特に金は金属表面と分子との相互作用が弱く、ほとんど触媒活性がないが、ナノ粒子においては酸化触媒としての活性が発現することが固体担持触媒において報告されている。今回、水溶性有機高分子を用いた保護によって金ナノクラスターを可溶化し、擬均一系触媒としての可能性を探求したところ、ポリ(ビニルピロリドン)を保護分子とした1.3nm平均の粒子サイズを有する金クラスターが有機ホウ素化合物の酸素酸化反応に対して極めて高活性を示すことを見出した。すなわち、アリールボロン酸に対して室温、空気中において塩基性水溶液中、金ナノクラスターを作用すると、ホモカップリング反応および、フェノールへの酸化反応が速やかに進行することがわかった。この場合、鈴木-宮浦反応に代表されるような、ハロゲン化アレーンの酸化的付加を経由するクロスカップリング反応は全く進行しない。また、この酸化活性はクラスターサイズに依存しており、例えば平均粒子サイズが9nmのクラスターでは同様の反応はほとんど進行しないことが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)