2003 Fiscal Year Annual Research Report
高温・高圧光学顕微鏡を用いた、超臨界水中での高分子化合物の挙動に関する研究
Project/Area Number |
15750109
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
出口 茂 独立行政法人海洋研究開発機構, 極限環境生物フロンティア研究システム, サブリーダー (40344296)
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Keywords | 超臨界水 / 亜臨界水 / 高温・高圧光学顕微鏡 / その場観察 / セルロース / キチン |
Research Abstract |
試料を水の臨界点以上、400℃、35MPaまで加熱、加圧できる高温・高圧光学顕微鏡を用い、様々な高分子化合物の亜臨界・超臨界水中での挙動を、その場観察により検討した。試料として、セルロース、キチン等の多糖類、ポリスチレンなどの合成高分子、シリカ、ガラスなどの無機物、酵母等の微生物を用いた。なかでも亜臨界・超臨界水中での加水分解挙動が詳細に調べられているセルロースに、特に注目した。 市販の微結晶セルロースを、0.1wt%の濃度で水に分散し、顕微鏡セルに導入した。室温で、25MPaまで加圧した後、400℃まで圧力を保ったまま急速昇温し、その過程でのセルロースの挙動を顕微鏡観察した。ビデオ録画した映像は、コンピューターに取り込み、画像解析ソフトウェアを用いて解析した。驚くべき事に、セルロースは、水中で300℃まで加熱しても、顕著な変化は認められなかった。さらに加熱を続けると、330℃付近で水に速やかに溶解した。偏光顕微鏡観察により、セルロースの結晶状態を調べたところ、溶解直前には、複屈折が完全に消失し、無定形に転移している事がわかった。水中で加熱する事により、セルロースも、でんぷんのアルファ化と同様の結晶-無定形転移を起こす事を初めて明らかにした。転移の温度は、結晶化度、結晶形に依存し、結晶化度が高いほど、転移温度も高かった。さらに希薄な硫酸存在下での挙動を検討したところ、セルロースの結晶-無定形転移は250℃付近から始まり、酸の濃度にはほとんど依存しないことも解った。一方、キチンは、熱水中ではセルロースよりも安定で、390℃で水に徐々に溶解した。
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