2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15750115
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
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Keywords | ナノ粒子 / ランダムレーザー / 光子局在化 |
Research Abstract |
貴金属や半導体のナノ粒子を蛍光色素溶液に加えると、蛍光波長のシフトやバンド幅の減少など、蛍光スペクトルに顕著な変化が現れることが知られている。さらに光子の平均自由行程が蛍光波長と同程度になると、ランダムレーザーなどのコヒーレント発光が観測されるようになる。ランダムレーザーの発生機構は、分散粒子間で反射・散乱される光子の経路が過渡的に閉じたループを形成し、このような光子の局在現象は、局所的に高い光エネルギー密度を実現することによって、ナノ反応場における新しい光化学を出現させる可能性がある。本研究の意義は、光子の局在化とナノ粒子表面共鳴を組み合わせることにより、新たな光触媒の機構を創設することである。また、光エネルギー局在化は本質的にエントロピー的・散逸的反応系の対極に位置し、光エネルギーの有効利用や省資源に適した光化学システムへ結び付くことが期待できる。 本年度は、温度による制御が可能なランダム媒体としてHPCを用いた実験を行った。HPCは41-42℃付近で相転移を起こす。この温度で、分子凝集により溶液は透明から不透明に変化する。色素をドープし、発光波長が平均自由行程に一致した条件下で、HPCは光子の局在化に適した媒体であることが認められた。Keton Red-HPC溶液の転移点において、後方散乱発光の急激なred shiftとsharpeningによって局在化の発生が観測された。 ランダム溶液に関する従来の研究では、光子局在化の発生は、通常、溶液濃度の調整によって達成される。これに対して、HPC溶液は温度による容易な制御方法を提供する。溶液の変更は不要であるため、光子局在化と関連現象に関して、より直接的な観測が可能となる。この結果に基づき平成16年度は、HPC溶液に電荷移動プローブ分子を加えて、光子局在化による影響について検討する計画である。さらに、局在化条件での二光子過程促進の可能性に関しても実験を行う予定である。
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