2003 Fiscal Year Annual Research Report
強電子相関ゼオライトの開発と吸着現象を利用した新しい磁性相、超伝導相の探索
Project/Area Number |
15750127
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
佐藤 博彦 中央大学, 理工学部, 助教授 (90262261)
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Keywords | 強相関物質 / 酸化物 / ゼオライト / 磁性 / 電気伝導 / 超伝導 / 水熱合成 / 吸着 |
Research Abstract |
水熱合成装置により、ポーラス構造をもつ新しい遷移金属酸化物の物質探索を行った。その結果、4d及び5d遷移金属元素を含む新物質、10H-BaRuO3、Ba2Ru7O18、(Ba-Sr)2Ru3O9、Ba2Ir3O9、Sr2Ir3O9などの発見に至った。10H-BaRuO3は広義の六方晶ペロブスカイトに属する構造を持ち、3つのRuO6八面体が面共有したクラスターと、2つのRuO6八面体が面共有したクラスターから成る。これらのクラスターが頂点共有し、八面体10個分の厚みを繰り返し単位とする構造を形成する。この物質の磁性はパウリ常磁性的であるが、スピングラス的な成分が含まれるなど興味深い点がある。電気伝導度は室温では金属的であるが、低温では低下し、2次元の可変長ホッピングモデルで説明できる。 Ba2Ru7O18は3つのRuO6八面体が直線的に稜共有したクラスターと、4つのRuO6八面体が菱形状に稜共有したクラスターから成り立っている。この物質の電気抵抗率は金属的な温度依存性を示すが、低温でも残留抵抗領域が見られず、温度の1.2乗に比例して減少し続ける異常な振る舞いが見られた。これは、一部の重い電子系化合物にみられる非フェルミ流体的な挙動と類似している。また、磁化率の温度依存性も、非フェルミ流体モデルと矛盾しない。(Ba-Sr)2Ru3O9、Ba2Ir3O9、Sr2Ir3O9はいずれもKSbO3型構造を持つ。この構造は、遷移金属と酸素がつくる籠状のクラスターの隙間にアルカリ土類金属が入り込んだ形を持っており、本研究で目標としているゼオライト類似物質といえる。(Ba-Sr)2Ru3O9の磁性は基本的にはパウリ常磁性と解釈できるが、異常な温度依存性を示しており、特異な構造との関連に興味が持たれる。Ba2Ir3O9およびSr2Ir3O9は強相関金属としての挙動を示す。今後はこれらの物質の物性をインターカレーションやイオン交換などの手法で制御することを試みていきたい。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] H.Sato, T.Ogawa, N.Okuda, J.Wakabayashi: "Crystal structure, magnetic and transport properties of new ruthenate phase, Ba2Ru7O18"Journal of Physical Society of Japan. 72(12). 3035-3038 (2003)