2003 Fiscal Year Annual Research Report
非線形偏微分方程式の大域的性質を保存する数値解法導出のための離散変分法の研究
Project/Area Number |
15760044
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
降旗 大介 大阪大学, サイバーメディアセンター, 助教授 (80242014)
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Keywords | 非線型偏微分方程式 / 離散変分法 / 保存則 / 差分法 / 高次差分 / モデリング |
Research Abstract |
本年度の目的は,これまでの離散変分法に関する研究結果をふまえた上で離散変分法が具体的に適用できる非線形偏微分方程式をより多く発見することと,離散変分法の考え方を逆に利用したモデリングという概念が有効であるかどうかを探ることにあった.この目的に対して研究を行なった結果,いくつかの新しい知見が得られた.まず年度の前半に物理,生物,化学等の多くの分野の文献及び研究集会などを調査し,変分概念により導出が可能なモデリングないしは結果としての方程式を探索した.その結果,離散変分法が適用可能な非線形偏微分方程式として(高次元)Cahn-Hilliard方程式,KdV方程式,非線型Schrodinger方程式,非線形Klein-Gordon方程式,Fermi-Pasta-Ulam方程式,Jeans方程式に始まる多くのものが発見された.この結果は,離散変分法の適用範囲が広いことを意味するだけではない.これらの方程式に対してうち良く知られたものには多くの研究があり,既存の数値スキームの性質も解析されているため,離散変分法を適用した結果と比較が可能である.これは,離散変分法の適用性や実用性,その理論的性質が正確に実装可能かどうかの検証を行なうことが可能なことをも意味するため,より詳細な研究をこれから行うための非常に適した足掛かりを得たことになる.また,離散変分法の基礎には物理的モデリング等でもよく使われる「物理現象を素過程で記述するのではなくその現象に対して系がもつ自由エネルギーの変分で記述する」という基本概念があるが,これを用いて物理現象をモデリングすることも試みた.これにより,現象を数学的に記述した上にその合理的な数値スキームも同時に得られることになり,物理学と(純粋)数学と応用数学が一貫した概念で繋がって一つの現象を包括的に表すことになる.結果,蛇行流に対して非常に自然かつ包括的なモデリングを行うことができるという非常に良い結果を得た.この研究はその包括性よりさらに発展することが強く期待できる. 以上の結果より,本年度は当初の計画に見込まれた多くの結果が得られたと評価できると考えるものである.
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