Research Abstract |
供試材として,これまでに第二高調波発現(SHG, Second Harmonic Generation)が認められているテルライト系ガラスセラミックスを用いた.まず,溶融急冷法によりガラス状態のサンプルを作製した.テルライトガラス試料について熱分析およびX線回折を行い,結晶化温度を調べた.その結果を参考にガラスに熱処理を施し,光透過性を保持しつつ,準安定結晶相を析出させ,SHG機能性を有するガラスセラミックスを作製した.熱処理時の冷却速度を変化させた試料を作製し,圧子圧入法により残留応力を測定した結果,表面近傍においては,残留応力の分布が異なっていた.熱処理時の冷却速度を変化させた試料および表面層を研磨した試料を用いて,マーカフリンジ法によりSHGを測定した結果,残留応力が大きい試料の方が大きいSH強度を示す傾向が認められた.なお,X線回折の結果より,いずれの冷却速度においても,表面層と内部に析出した結晶相には変化が認められなかった.外力として,一様圧縮および曲げ応力を負荷した状態で,クルツ法によりSHGを測定した.一様な圧縮応力を負荷した場合には,負荷応力の増加にともない,SH強度は低下する傾向が認められたが,その変化は小さかった.他方,曲げ応力を負荷した場合には,一様な圧縮応力を負荷した場合よりも大きな変化が認められ,負荷応力の増加にともないSH強度が低下した.以上のように,本研究で作製したガラスセラミックスの示すSHGは,残留応力や外力など,応力の影響を受けることが明らかとなった.これは,非反転対称性を有する,熱処理により析出した準安定結晶の構造と,応力により生じる微視的なひずみに起因すると考えられる.また,一様な荷重を負荷した場合よりも,熱処理で生じる残留応力や曲げ応力など,分布のある応力状態の方がSH強度に大きな影響を及ぼすと考えられる.
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