Research Abstract |
高エネルギービームのターゲットを模擬した高速液体噴流の自由界面現象について,縮流ノズル内壁面境界層の発達過程との関連性を調査した。ノズル壁面境界層をレーザー流速計で測定するとともに,噴流自由界面に照射した細いレーザー光の屈折角を光位置検出素子で計測することにより,自由界面変動の周波数特性を測定した。 ノズル出口境界層が層流となる低流速の場合,噴流自由界面には周期性の高い縞状波が観察され,自由界面変動のパワースペクトル分布は明瞭なピーク(卓越周波数)を持つ。また,流速の増加により出口境界層が乱流へと変化すると,自由界面は乱れ,スペクトルのピークは消失した。よって,本測定法により,ノズル出口境界層の性状に依存した噴流自由界面の変化を,スペクトルの分布形状から定量的に扱うことが可能となった。 比較的高流速の条件では,ノズル内部の圧力勾配下においても境界層内層の乱れは減少しないことが示された。内層の乱れの残留によって,ノズル出口付近における乱流境界層への再遷移が速やかとなり,自由界面の乱れが増加する。よって,ノズル設計において,出口付近の乱流再遷移への配慮が重要であることが示された。 一方,再層流化された境界層が剥離して生ずる縞状波は,自由界面下せん断層の安定性理論により予測される。非粘性オア・ゾンマーフェルト方程式を,チェビシェフ多項式展開を用いて固有値問題に帰着させ,噴流自由界面の線形安定性を評価した。空間増幅率が最大となる最不安定擾乱の周波数は,測定された卓越周波数と良好に一致した。また,本解析で対象とした噴流は,全てのウェーバ数に対して不安定解を持つ。しかし,ウェーバ数が小さくなるほど擾乱の増幅率は減少するため,せん断層厚さが薄いなどの低ウェーバ数条件では,表面張力により噴流自由界面波が抑制されることが明らかとなった。
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