2003 Fiscal Year Annual Research Report
ノイズを考慮した熱対流場の確率論的挙動の解明と応用
Project/Area Number |
15760132
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石田 秀士 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 助手 (80283737)
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Keywords | 情報量 / 不変集合 / 確率測度 / 粗視化 / マスター方程式 / 一次風上差分 / エントピー生成 / 不可逆熱力学 |
Research Abstract |
本年度は常微分方程式系において,不変集合上の情報量を定義し,その時間変化から粗視化の効果を検討し,それらの結果から本研究課題の目的であるノイズと熱力学第2法則との関連について考察した.力学系としてはローレンツモデルと位相空間収縮率が一様でないものとしてローレンツモデルを修正したモデルを使用した.計算の際は計算領域を幅εの立方体に分割して粗視化し,各微少領域上の確率測度の時間発展方程式が一般的なマスター方程式に従うものと仮定し,数値的に確率測度の分布の時間発展の様子を解析した. 本研究の主たる結果としてはまずそのような粗視化した系の時間発展方程式がマスター方程式で記述されることがDellnitzらの結果から自然な帰結であることを指摘し,さらにεが十分小さいときマスター方程式による数値解が保存系一次風上差分による数値解析結果と完全に一致することを理論的に予想し,それを数値的に確かめた.一次風上差分を通常の確率密度輸送方程式(連続式)に用いた場合,擬似的に拡散項が生じることがよく知られている.この拡散項は運動方程式に揺動力(ノイズ)を加えた形式を持つLangevin方程式の確率密度関数の輸送方程式中にも現れることもまたよく知られている.このことは粗視化という行為が認識の不確定に基づくノイズの役割を果たしており,この効果を一次風上差分で離散化することにより効率的に数値計算できることを意味しており注目に値する.実際一次風上差分を用いてマスター方程式を解くのに必要な時間の数分の1から数十分の1で同一の確率測度の数値解を得ることができた.次に不変集合上でRenyi情報量に相当する情報量を定義し,定常状態から遠く離れた初期分布を用いた場合,初期にそのような情報量がorderに依存しない振る舞いをすることを明らかにした.これは初期に不変集合上の確率測度が一様化することを表している.本研究ではこの一様化が上記の拡散効果によって生じており,この効果が驚くべきことに熱力学第2法則を成立させるエントロピー生成のメカニズムに対応がつくことを世界で初めて明らかにした.このことはこのような確率測度の一様化が不可逆過程が進行する過程で広く一般の物理現象で確認できることを意味している. 本研究の結果は裏面の研究業績欄にはとりあえず記入できないがChaos誌(American Institute of Physics)に投稿中であり,また5月に開催される2004年度複雑系国際会議(ICCS2004)にて発表を予定(既にエントリー済み)している.
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