Research Abstract |
フォトニック結晶ファイバ(PCF)は,一般の光ファイバとは違い,クラッド領域はエアホールと呼ばれる複数の空孔により構成され,その内側にあるコアに光を通す光ファイバである.通常,その構成材料は石英(シリカ)と空気であり,コア領域とクラッド領域の屈折率差が大きいため,PCFの高精度評価にはベクトル波解析が不可欠である.本年度の研究では,空孔の大きさや形,配置などによらず自在に対応可能なベクトル型の有限要素法をPCFの解析手法として導入し,実効屈折率,波長分散特性,モード複屈折率,モードフィールド径,実効コア断面積などの光学特性を高速,かつ高精度に評価可能な解析設計支援環境を構築した.本解析設計支援システムを,理想的な形状をもつPCFのみならず,実際に作製されたさまざまなPCFの評価に適用し,非常に精度良く実験結果を理論的に説明することに成功し,本設計支援システムの有効性を示した.さらに,本研究で開発した解析手法を用いて,PCFの波長分散特性の系統的な評価を行い,分散特性制御のための基本となるデータを収集し,このデータをもとに,分散値だけでなく分散スロープを含めて,広い波長帯域で波長分散特性を高精度に制御するためのPCF構造の設計指針を確立した.具体的には,通常のPCFは,クラッド領域の空孔直径が全て同じ大きさの空孔によって構成されるため,その等価的な屈折率分布は単純なものとなり,分散特性を広帯域に渡って制御することが難しいことを示すとともに,各空孔リング層の空孔直径をファイバの半径方向に変化させることにより,等価的にさまざまな屈折率分布を実現することができ,分散スロープを含めた広帯域な波長分散制御が可能であることを見出した.また,この設計法を用いて,波長1200nm〜1700nmの範囲で波長分散が零分散付近でフラットとなる超広帯域分散フラットPCFの設計に成功した.
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