2004 Fiscal Year Annual Research Report
非可逆圧縮過程における暗号学的性質を利用したデジタル署名技術の開発
Project/Area Number |
15760288
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Research Institution | NTT Communication Science Laboratories |
Principal Investigator |
村山 立人 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 知能情報研究部・創発学習研究グループ, 社員 (80360650)
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Keywords | データ圧縮 / レート・歪み理論 / 統計物理学 / レプリカ法 / ビリーフ・プロパゲーション |
Research Abstract |
本年度は,提案する認証方式の基礎になる非可逆圧縮過程を汎用的な計算機言語(C++)で実装した。この圧縮方式は,完全な乱数列を「レート・歪み関数」と呼ばれる理論限界の近傍まで効率的に符号化する方法を,アルゴリズムとして実現した唯一の方式である.この方式は,本研究課題の提案書に記載した符号化のモデルを採用し,計算量的に実現不可能とされてきた探索技術をアルゴリズム的に実装することで可能となった.また,このモデルの静的性質,つまり符号語が存在する限界圧縮率は,統計物理学における場の理論的解析手法を導入することで厳密に評価できることが確認された.この場の理論的方法は「レプリカ法」と呼ばれ,近年ヨーロッパを中心にさまざまな数理工学的な諸問題に応用が試みられている方法である.今回,データ圧縮の分野でこの解析手法を全面的に応用したが,これは世界で唯一の肯定的な成果報告にもなっている.しかし,このモデルの動的性質,つまり具体的な符号化のアルゴリズムをモデル化した上での圧縮率の時間変化の様子には,数理的にまだ未解明な部分が多い.そのため,本年度は,この動的性質を数値的に評価する立場に徹した.その結果,符号化が成功する一連のアルゴリズムの族に普遍的な構造があることが発見された.具体的には,符号化の操作においては,逐次的に有望な符号語の候補を絞っていく「ビリーフ・プロパゲーション」などの確率的推論法が極めて有効であることが判明した.これは,可逆圧縮が辞書法など全く異なる枠組による符号化を行っているのと対照的である.
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Research Products
(6 results)