2003 Fiscal Year Annual Research Report
量子鍵配送方式の安全性および鍵共有に関する通信路容量の解析
Project/Area Number |
15760289
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
渡辺 曜大 独立行政法人理化学研究所, 脳数理研究チーム, 基礎科学特別研究員 (70360675)
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Keywords | 量子暗号 / 量子鍵配送 / 誤り訂正技術 / 情報量的安全性 / 鍵圧縮法 / 安全性概念 / 強秘匿性 |
Research Abstract |
現在標準的に用いられている多くの暗号技術の安全性は,桁数の大きい素因数分解問題や離散対数問題を解くのが難しいといういわゆる計算量的な仮定にもとづいている.このような計算量的な仮定にもとづく暗号は,計算機能力の向上やアルゴリズムの発展に伴い,長い期間にわたってその安全性を確保することが難しくなってきている.さらに,量子コンピュータが実現したり,多くの研究者の予想に反してP=NPが示されたりすると安全性そのものがまったく保証されないという事態になってしまう. これに対して,量子暗号の主要な目的は,計算量的な仮定によらない暗号技術を構成することであり,「無条件の安全性」と呼ばれる極めて強い安全性を保証することのできる暗号技術として現在注目されている.本研究の目的は,量子暗号(さらには量子情報技術)の中で現在最も実用化に近いと考えられている量子鍵配送方式について,その安全性および効率性の観点から解析し,実用化に向けた提案を行うことである. 本年度は,低密度パリティ検査符号を用いた量子鍵配送における効率的な誤り訂正法について研究した.具体的には,その行ベクトルの張る空間に段階的な包含関係が成り立つ低密度パリティ検査行列の族を構成し,その検査行列の族を利用して復号の成否に応じて徐々に公開するシンドローム情報を追加してゆく適応的な復号法を提案した(三菱電機株式会社と共同で国際特許出願中).これにより,誤り訂正と通信路の受信誤り率の推定とが同時に行えるようになり,誤り訂正のために公開する情報を必要最小限に抑えることが期待できる. これとは別に,公開鍵暗号の安全性概念の間に成り立つ関係について,攻撃者が平文の事前情報にアクセスできるような通常よりも広い設定において調べた.その結果,通常の設定では同値であった安全性概念がより広い設定においては分離することが示された.
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