2004 Fiscal Year Annual Research Report
町並み保存地区における空き家の発生要因とその影響に関する研究-権利と段階的評価-
Project/Area Number |
15760463
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Research Institution | Hiroshima Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
吉田 倫子 県立広島女子大学, 生活科学部生活環境学科, 助手 (00326422)
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Keywords | 重要伝統的建造物群保存地区 / 空き家 / 保存 / 権利 / 修理 |
Research Abstract |
景観保存を目的に選定された重要伝統的建造物群保存地区(以下、伝建地区)は過疎化、高齢化、産業の衰退等の問題により、多くの空き家を抱えている。しかし、空き家の実態、空き家所有者の実態は充分に把握されていない。空き家化のメカニズム、空き家所有者の保存意識や管理実態を明らかにし、空き家活用の可能性を探るとともに、空き家の外観が町並みに与える影響を探ることを本研究の目的とする。そこで、広島県竹原町並み保存地区(以下、竹原地区)を事例として取り上げる。 本年度研究調査は、竹原地区内の住宅の登記簿を基に空き家の権利状況等を、加えて修理修景の実態を見る。また、現居住者へのアンケートにより空き家に対する意識調査を行った。 空き家の現状については、全国の伝建地区と比較すると、竹原地区の空き家率(全建物に対する空き家の割合)は低くないものの、全体の2割と地区内としては空き家が多くを占めている。また、不動産権利移転原因と空き家との関連性は見られない。また、空き家権利者は、地区外権利者である割合が高くなっている。空き家と建物の規模の関係を見ると、規模は比較的小さいものの、地区全体の割合から見れば一般的な規模であり、規模の大小と空き家の発生には関係が見られない。 町並みへの影響については、修理修景の有無へは、空き家は影響しておらず、空き家であっても修理修景されている割合が高いことがわかった。しかし、空き家で修理修景されていないものは、住まず、管理されていないと考えられるので、滅失へつながる危険性を秘めている。 伝建制度が整備され、30年を経た現在、滅失の危険性をもつ伝統的建造物が存在する地区は早急に保存を進める必要がある。一方で、修理を終えた伝統的建造物についても、空き家化は進行しており、伝統的建造物の滅失の可能性を低下させる方策を打ち立てる必要がある。
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