2004 Fiscal Year Annual Research Report
アジア・ヨーロッパ都市における街路型職住複合建築の地域社会・経済連関に関する研究
Project/Area Number |
15760468
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
張 漢賢 鳥取環境大学, 環境情報学部, 助手 (80341064)
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Keywords | ショップハウス / タウンハウス / 都心居住 / 多階層社会 / 都市住宅 / 空間モデル / ローズ(the Rows) / 持続的 |
Research Abstract |
今年度の研究実績は、主にフィールド調査と文献によるものである。昨年度の研究に引き続き、ロンドンのタウンハウスの調査研究に加え、チェスターの都市住宅「ローズ(the Rows)」の実地調査と文献収集を行った。 ロンドンのタウンハウス、チェスターのローズは、イギリス土着の都市住宅ではあるが、それぞれの発展軌跡をもっている。数百年にわたって継続利用されている都市住宅の形成背景について、次のように整理する。1)チェスターとロンドン両都市とも、市域の物理的な拡大が制限されている。チェスターは城郭都市であり、城郭内の敷地利用が厳しく制限されていた。ロンドンはエリザベス一世の建設禁止令により、都市の無秩序な拡大が抑制されていた。限られた土地を有効に利用するために、ローズ、タウンハウスのような融通性ある建築空間が形成される。2)ローズには、階ごとに区分所有される歴史があり、増改築・修繕時に所有者間の調整が難航し、老朽化のため、町全体が衰退を辿った経験がある。地域有力な教会の買い上げにより、ローズの市街地が復興されたが、タウンハウスを含み、イギリスでは土地・建物の区分所有は一般的に好まれていない。ローズの共同歩廊が連続になるまで、百年以上の調整を要した。建物を長く使い続けるために、土地、建物単体の所有関係、管理責任が重要なポイントである。3)タウンハウスは、ある種の大量建設、投機的な不動産開発の結果であるが、その背後に、建築内容、建築行為を厳しく制限する建築法令がある。タウンハウスは、当時の不動産市場の需要に合わせ、ライフスタイル、文化趣味、アメニティが熟慮され、形成されたものである。大量建設、投機的な開発であるにもかかわらず、美意識、快適性、不動産価値を熟慮した機能的な発想が、長く使い続けられる住宅ストックの形成につながった。長く使い続けられる都市住宅を形成するには、その土台となるライフスタイル、法令・規制があるが、不動産としての生産性を向上する緒工夫は無視できない。こういった計算尽くされた緒工夫は、ライフスタイル、法令・規制の副次的な産物である場合が多いが、持続的なハウジングシステムの骨子になっている。
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