2003 Fiscal Year Annual Research Report
高イオン伝導性を有する貴金属カルコハライドガラスの機能とネットワーク構造
Project/Area Number |
15760495
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
臼杵 毅 山形大学, 理学部, 教授 (70250909)
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Keywords | イオン伝導性ガラス / 貴金属カルコハライド / イオン伝導度 / 高エネルギーX線回折 / 中性子回折 / EXAFS |
Research Abstract |
「ガラス化によってなぜ高イオン伝導性が出現するのか?」。これは、固体でありながら室温で電解質水溶液なみのイオン伝導性を示すことで知られる「高イオン伝導性ガラス」分野での究極の疑問である。可動イオン周囲の環境構造とガラスネットワーク構造双方に対し、独立に詳細な解析が可能な系を対象として、早急に研究を進める必要がある。この狙いに合致する系として我々が注目しているのは、ガラス形成物質に貴金属イオンを含まないAgI-カルコゲナイド系ガラス(AgI-As_2X_3(X:S,Se))である。本研究では、このようなAgI-As_2Se_3系ガラスに対し、交流インピーダンス方による電気伝導度の測定、DSCによる熱物性の測定を行った。また、中性子回折、X線回折およびEXAFS測定を実施し、ガラス中でのAgイオン周囲の配位環境やガラスを形成するネットワーク構造とイオン輸送現象との相関を調査した。 その結果、AgI-AS_2Se_3系は60mol%AgI組成までバルクガラスが得られ、そのイオン伝導度はAgIの添加とともに指数関数的に増加することが分かった。また、熱物性の詳細な調査から、ガラス転移点がAgIの結晶相転移温度を下回るところでガラス化不可能となることが判明した。EXAFS信号に対する最小自乗解析の結果、ガラス骨格の形成に寄与しているAs-Se相関は、AgIが添加されても大きく変化せず、共有結合性の結合を保持していること、Ag-I結合距離も結晶AgIにおけるものとほぼ同様な値を示し、Ag周囲の配位環境はガラス中でも結晶AgIとほぼ同様であることが伺えた。回折実験で得られた二体分布関数において、2.4Å付近の鋭いピークは共有結合性As-Se結合相関に対応する。AgIの添加とともにこのピークが減衰し、逆に2.8Å付近にサブピークが成長する。同時に、第2配位圏において4〜5Å付近の成分が成長している。これらはいずれも、結晶AgI中に存在する最近接Ag-I距離およびI-I距離に対応している。X線および中性子線回折実験データに対する定量構造解析の結果、As-Se相関は組成によらず結合距離約2.41Å、配位数約3、Ag-I相関は結合距離約2.78Å、配位数約4であることが分かった。また、構造因子S(Q)のプレピーク(FSDP)がAgIの添加とともに低Qシフトすることから、AgIの添加によってAs-Seネットワークチェーンの相関距離が増大することも判明した。これらのことから、本系のガラス構造は、共有結合性As(Se_<1/2>)_3ピラミッドユニットの連結により形成されたネットワーク中に、それらとは構造的に分離する形で、AgI由来の伝導パスが形成されていることが示唆される。このような擬二元混合状態が達成されていることが、本系の高イオン伝導特性と密接に関連していると結論付けられる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Takeshi USUKI et al.: "Coordination Environment and Network Structure in AgI Doped As-Chalcogenide Glasses"World Scientific Publishing. (in press). (2004)
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[Publications] Takeshi USUKI et al.: "Glass Network Structure in Noble Metal Chalcohalide Glasses"Solid State Ionics : Science and Technology of Ions in Motion Edited by B.V.R.Chowdari, World Scientific Publishing. (in press). (2004)