2003 Fiscal Year Annual Research Report
クエン酸錯体法を用いた高配向性を有する層状構造酸化物熱電変換材料の合成と物性
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15760540
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井藤 幹夫 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00294033)
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Keywords | 熱電変換材料 / クエン酸錯体法 / c軸配向度 / ゼーベック係数 / 電気抵抗率 / 出力因子 / 微細組織 / 加圧焼結法 |
Research Abstract |
Na_xCo_2O_4系材料を対象にクエン酸錯体法の各種条件の最適化を試みた。クエン酸錯体法ではNa_xCo_2O_4相形成に必要な仮焼時間が、従来の錯体重合法を用いた場合より長く、約4倍の仮焼時間が必要となることが分かった。これにともない、Na成分の揮発量が大きく、仕込み組成において目的組成の約2倍のNa量が必要となることが明らかとなった。得られる前駆体粉末の形状は、Na_xCo_2O_4相の層状結晶構造を反映して極めて扁平なプレート状であった。またその結晶粒サイズは、従来の固相反応法により作製された粉末に比較して極めて微細となることが分かった。この前駆体粉末を圧縮成型し、無加圧焼結を施したところ、プレート状粉末がプレス方向に積層した多結晶焼結体が得られた。そのc軸配向度を算出したところ約0.9となり,単結晶(完全配向)の理論値1に極めて近い値が得られた。また焼結体の結晶粒径も前駆体粉末の微細さを反映し、従来試料よりも著しく微細であった。このようにして得られた焼結体の熱電特性を評価した。クエン酸錯体法により極めて均質な組成を有するNa_xCo_2O_4相が得られることから、ゼーベック係数は従来の固相反応法試料に比較して大きく向上し、また電気抵抗率はほぼ同等の値となった。極めて微細な組織を有するにもかかわらず同程度の電気抵抗率を有することは、高配向化による抵抗率低減効果が有効に働いていることを示していると思われる。これらの結果から出力因子もまた従来の固相反応法試料に比較して著しく向上した。一方、ホットプレスやSPSなどの加圧焼結の適用は、カーボンダイスを用いる装置上の制約から、還元雰囲気での焼結を余儀なくされ、Na_xCo_2O_4相の一部分解を引き起こし、かえって配向性を下げる結果となり、性能もまた無加圧焼結試料を上回れず、Na_xCo_2O_4焼結体の有効な合成法とはならなかった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Tomoya Nagira, Mikio Ito, Shigeru Katsuyama, Shigeta Hara: "Thermoelectric Properties of Na_xCo_2O_4 Prepared by the Polymerized Complex Method and Spark Plasma Sintering"Materials Transactions. 44・9. 1866-1871 (2003)
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[Publications] Shigeru Katsuyama, Yoshiki Takagi, Mikio Ito, Shigeta Hara: "Microscopic Structure and Thermoelectric Properties of ZnO Ceramics with Various Added Elements Prepared by the Polymerized Complex Method"Journal of the Japan Society of Powder and Powder Metallurgy. 50・11. 944-947 (2003)
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[Publications] Mikio Ito, Yoshimitsu Oda, Shigeta Hara: "Synthesis of c-axis Oriented Na_xCo_2O_4 Thermoelectric Oxide by the Citric Acid Complex Method"Journal of the Japan Society of Powder and Powder Metallurgy. 50・11. 952-957 (2003)
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[Publications] Mikio Ito, Tomoya Nagira, Daisuko Furumoto, Yoshimitsu Oda, Shigeta Hara: "Synthesis of Na_xCo_2O_4 Thermoelectric Oxide with Crystallographic Anisotropy by Chemical Solution Process"Science and Technology of Advanced Materials. Vol.5. 125-131 (2004)