Research Abstract |
Na_xCo_2O_4へのAg分散における性能向上効果について検討を行った.Ag分散することにより,電気抵抗率を大幅に低減できる一方,ゼーベック係数は大きく減少することなく,その結果,出力因子を大きく向上させることが可能であることがわかった.しかしながら熱伝導率の大きいAgを分散させることにより,全体の熱伝導率が上昇するため,これが性能向上の妨げとなることが明らかとなった.通常の固相反応法やクエン酸錯体法では,Ag粒が10μm程度の粗大粒としてNa_xCo_2O_4母相中に複合化されており,Ag粒を微細に分散させることでフォノン散乱を強め,熱伝導率の低減を図った.まず,クエン酸錯体法により合成されたNa_xCo_2O_4前駆体粉末に1μm程度のAg粉末を混合し,メカニカルグラインディング処理を施した.処理後の複合粉末では,Ag粒は1-2μmと微細に分散していたものの,焼結中に粒成長を起こし,最終的には10μm前後となり,目的とした微細分散化が困難であることがわかった.そこで,より一層の微細分散化を実現させるため,Agイオンを含む水溶液中にNa_xCo_2O_4前駆体粉末を混合,撹拌し,その後乾燥させることによってNa_xCo_2O_4粉末表面に微細にAg粒を析出させることを試みた.その結果,Na_xCo_2O_4粉末表面には数十nmのきわめて微細なAg粒が析出することがわかった.一方,そのほかにも粒子表面にきわめて薄くではあるものの,広くAg相が膜状に析出することも確認された.この複合粉末を焼結した結果,Ag粒子は5-8μmと,従来試料よりはやや微細化したものの,著しい微細分散化はできなかった.一方,Ag相中にはCoが検出され,母相との反応も見られた.これに起因してセーベック係数がAg無添加試料を上回り,性能指数としてはAg添加により向上する結果となった.
|