2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15760609
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平野 伸夫 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 助手 (80344688)
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Keywords | Granite / Fracture / Hydrothermal Derrived Fracture / HDF / Hydrothermal condition |
Research Abstract |
高温高圧環境下における熱水と花崗岩との相互作用によって、花崗岩に微小き裂が発生する熱水誘起割れ(HDF:Hydrothermally Derived Fracturing)と呼ばれる現象が起こることが認められた(Hirano et al.,2002)。また、HDF現象は主として石英に認められることから、花崗岩中の地下のき裂形成と進展の重要な要因と考えられる。この現象は高レベル放射性核廃棄物の地層処分など地下空間利用設備の安定評価や地熱エネルギー開発のための重要な設計・評価指針を与え、また、HDFが断層の固着域のずれを誘発し、地震の発生に重要な役割を果たしている可能性があることから、HDFが生じる具体的な条件を明らかにする必要がある。そこで、本研究では花崗岩を熱水環境下で加熱し、HDFが生じる温度・流体圧力の関係を検討した。 実験試料には滝谷花崗閃緑岩(滝谷花崗岩)、領家花崗岩類の伊奈川花崗岩(領家花崗岩)を用いた。花崗岩には、3つの弱面が存在し、き裂の異方性を有する。滝谷花崗岩は定方位ブロックサンプルの各弱面より抽出した直径36mmのコアをそれぞれFace1,2,3とし、厚さ10mm円盤状に、花崗岩の弱面と試料の平面が平行になるよう成型し、領家花崗岩は15mm×15mm×10mmの直方体に成型した。それぞれをバッチ式オートクレーブ内に所定量の蒸留水と共に封入した後に所定温度まで昇温速度10℃/minにて昇温した。オートクレーブ内の所定温度および流体圧力はそれぞれ200℃〜600℃、0.1MPa〜40MPaの範囲である。実験後、蛍光剤を添加した低粘性樹脂を花崗岩に充填、固化させ、岩石薄片を作成することによりき裂の可視化と細線化をおこない、花崗岩全体のき裂密度と石英粒子内のき裂密度、および花崗岩の弱面と垂直方向の弾性波の伝播速度を測定した。 実験結果によると、無水環境下で加熱した花崗岩よりも熱水環境下で加熱したもののほうが、き裂密度が上昇し、弾性波伝播速度が低下した。また、熱水環境下では高圧力条件よりも低圧力条件で加熱した花崗岩のほうがよりき裂が発生しやすい。花崗岩全体のき裂密度と石英粒子内のき裂密度の増加率が似た傾向を示していることから、石英粒子の破壊が花崗岩全体のき裂の増加に関与していると言える。また、各弱面より成型した試料で弾性波伝播速度の変化量に大きな違いがなかったため、HDFによるき裂の発生方向に異方性は無いと考えられる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] N.Hirano, J.Abe, G.Bignall, N.Tsuchiya: "Hydrothermally derived fracturing of quartz in grantic rock occurring in low pressure and high temperature regime of geothermal fluid"GRC Transaction. Vol.27. 303-306 (2003)
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[Publications] N.Hirano, J.Abe, G.Bignall, N.Tsuchiya: "Hydrothermally derived fracturing in low pressure and high temperature regime of geothermal fluid"Proceedings of 1st International workshop on Water Dynamics. 103-104 (2004)