2003 Fiscal Year Annual Research Report
電子ライナックのコヒーレント放射を用いたチェレンコフメーザー開発のための基礎研究
Project/Area Number |
15760637
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 俊晴 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (00273532)
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Keywords | コヒーレント放射 / 電子ライナック / 短バンチ / チェレンコフ放射 / メーザー / ミリ波 / テラヘルツ / ビーム診断 |
Research Abstract |
本研究は、電子ライナックの短バンチビームを用いたテラヘルツ・ミリ波領域におけるコヒーレントなチェレンコフ放射の基礎的性質を実験的に解明し、新型チェレンコフメーザー開発のための基礎研究を行うことを目的とする。本年度は、ビームトランスポート系下流に設けた真空槽の中で数種類の誘電体を交換し、電子ビームからの距離、角度などを変化させる操作を真空容器外部から行うためのシステムを構築した。電子ライナック運転中は加速器室には立ち入れないため、駆動部にはステッピングモータを用い、TCP/IPプロトコルとGP-IBによるリモート制御システムとした。 既にバンチングされているコヒーレント放射を種放射にして最適な増幅を行うためには、電子ビームのパルスの詳細な情報を知らなければならない。本研究では、高速ゲートインテグレーター、高速ミリ波検出器、干渉計を用いてパルスの一部を切り出してインターフェログラムを測定し、それを解析してビームに関する詳細情報を得るという新しいビーム診断法を開発した。その結果、4マイクロ秒幅のパルスの中では、バンチ間隔が最大60フェムト秒の揺らぎを持っていることが初めて明らかにされた。これは理論上のパルス間隔770ピコ秒の0.008%にあたり、非常に高精度・高分解能の診断法であることがわかる。このバンチ間隔の揺らぎの理由は、電子加速に使うマイクロ波の位相揺らぎによるものと見積もられた。また、バンチ間隔だけでなく、パルスを構成するバンチごとの電子分布にも差異があることが初めて明らかにされた。この新たな診断法の開発により、メーザー増幅を抑制する原因となる事象を探索することが可能になった。
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