2003 Fiscal Year Annual Research Report
マラリア媒介蚊ガンビエハマダラカグループの同所的共存機構
Project/Area Number |
15770012
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
都野 展子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (60295102)
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Keywords | Anopheles gambiae / Anopheles arabiensis / malaria vector / mosquito / larval ecology / mortality / phytoplankton / coexistence |
Research Abstract |
ガンビエハマダラカはサハラ以南アフリカに蔓延する最も深刻なマラリア媒介蚊である。この幼虫は日当たりの良い場所にある雨後の水溜りなどによく見出される。だがこの種の発生を決定する環境要因は未だ明かでない。このガンビエハマダラカの若齢幼虫をケニア西部高地にある原始林カカメガの森の中と外に導入しその生存率を比較し、生存過程を考察した。実験は次の様に行った。森の中、林縁、開けた場所の3つのカテゴリーを設けそれぞれにたらいを4つから6つ設置し10リットルの水を満たし、ガンビエハマダラカ若齢幼虫20個体をそれぞれに導入し10日後の生存率を比較した。これを3回繰り返した。その結果開けた場所においたたらいでの生存率がもっとも高く、森の中と林縁ではほとんどの導入個体が生き残れなかった。群集組成と環境要因をマッピングした結果、開けた場所においたたらいと林縁及び森の中では定着した水棲生物群集が異なった。ガンビエハマダラカの生存率に関与した環境要因を探るため入れ子状多変量解析を行った。その結果、森の中と林縁におけるガンビエハマダラカの低い生存率はそこが開けた場所ではないという理由と捕食者の存在によって説明された。開けた場所においたサンプル内の生存率の違いを十分説明する環境要因はこの実験で測定されていない要因であることがわかった。ガンビエハマダラカ個体群にとって重要であると予測される環境要因は食物資源量に影響する植物プランクトンの量であるという推測が西ケニア低地のキスム(海抜1100m)で行った野外観察から得られた。キスムでガンビエハマダラカ幼虫の繁殖場所から採集を繰り返し幼虫の発生密度と発生環境の相関を調べた結果、相関の高かった環境要因はある種の植物プランクトンの大発生であった。ガンビエハマダラカ幼虫個体群動態に重要な環境要因は彼らが利用可能な微小藻類(植物プランクトン)であると考えられた。
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