2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15770048
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上妻 多紀子 (中村 多紀子) 九州大学, 大学院・芸術工学府, 教務職員 (70274545)
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Keywords | クモ類 / 視覚 / 単眼 / 視葉 / 光受容細胞 / 脳 |
Research Abstract |
1 昼行性のハエトリグモ、昼夜行性のコガネグモ、夜行性のオニグモの行動解析 ハエトリグモはクモ類の中で最も発達した視覚機能を持ち、視覚に依存した生活をしている。ハエトリグモの前中眼の網膜には分光感度の異なる4種類の視細胞が含まれており、ハエトリグモは色覚を持つと考えられてきたが、色覚に関する十分な行動実験は行われていなかった。自由歩行させたハエトリグモを用いて熱刺激と色を組み合わせた嫌悪学習により色識別テストを行った結果、可視光による照明下でハエトリグモは実験アリーナの高温部分と関連付けた色紙を温度差のない条件でも避けるようになった。色紙においては黒と白、および青、緑、赤、を灰色から識別した。この結果はハエトリグモは優れた色覚を持つ事を示している。一方、網膜に3種類の視細胞を含むコガネグモについてハエトリグモと類似の手法を用いて調べた結果、コガネグモは可視領域では青から緑の領域の色を識別している可能性が高い事が示唆された。夜行性のオニグモは網膜に1種類の視細胞のみを含んでおり、色覚を持たない事が予想された。 2 コガネグモの視神経遠心性細胞の形態と役割 コガネグモの眼の視覚感度は恒常暗黒下で明瞭な概日リズムを示す。視覚感度の概日リズムは脳内の概日時計の情報が視神経遠心性細胞を介して視細胞に伝えられて発現すると考えられる。視神経遠心性細胞の形態を詳細に調べるために、数種類の色素を用いて視神経切断端から逆行性染色を行った結果、前大脳の食道側方領域及び神経分泌細胞群に遠心性細胞の細胞体が染色された。神経分泌細胞を傷付けると明期終了に伴う感度上昇が消失する事から、視覚感度の調節に神経分泌細胞の関与が示唆された。一方、コガネグモの脳内光感受性細胞の活動電位発火頻度は夜間には高く昼間には低くなる事から、脳内光感受性細胞の感度も視細胞の感度と同様に概日時計に支配されている事が示唆された。
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Research Products
(1 results)