2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15770048
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上妻 多紀子 (中村 多紀子) 九州大学, 大学院芸術工学研究院, 教務員 (70274545)
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Keywords | クモ類 / 概日リズム / 脳 / 光受容細胞 / 眼 / 視葉 |
Research Abstract |
クモ類の脳内光感受性細胞の概日リズムにおける役割と生理機能について調べた。ショウジョウバエの時計遺伝子Periodの産物であるPERIODタンパク質に対する抗体を用いて免疫組織化学法によりPERタンパク質様の物質を発現している細胞を調べた結果、コガネグモの側眼視葉に位置する一対の大型細胞の細胞質に陽性反応が認められた。側眼視葉のPER抗体免疫陽性細胞は視葉周辺部の細胞と比較して細胞体のサイズが数倍大きいことや、側眼視葉の背側部に位置することから、脳光照射に伴い電気的に興奮する視葉大型細胞と同一の細胞であると思われた。更に、PER抗体によって前大脳神経分泌細胞群の領域と食道側方の鋏角神経節近傍領域に数個の細胞から形成されるクラスターが標識された。鋏角神経節近傍領域の免疫陽性細胞群は眼の感度の概日リズムを調節する機能を持つ視神経遠心性細胞の領域に位置していた。 光ファイバーを用いてクモの脳を局所的に光照射した時の視覚感度の概日リズムについて調べたところ、恒常暗黒下で主観的夜にあたる時間帯に脳に12時間の光照射を行った場合、体内時計はリセットされ、脳で受容された光に同調したリズムを示した。眼に光照射した場合には、強い光に対しては同調するが、脳を光照射した時に眼に漏れる程度の弱い光には同調しなかった。これらの結果は眼および脳内光受容細胞の両方が概日時計を外界の光環境に同調させるための光受容器として働いていることを示している。免疫組織化学染色の結果と合わせると、クモの視葉に存在する光感受性細胞は光受容機能を持つと同時に時計機能を備えている可能性が高いと考えられる。一方で、昼行性のクモと夜行性のクモでは、脳内光感受性細胞の電気的応答特性や、脳光照射によって引き起こされる行動パターンが異なっていることから、クモ類の脳内光受容細胞は活動時間帯に応じた役割と種固有の生理機能を持つと考えられる。
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