2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15770159
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Research Institution | Kamakura Women's University |
Principal Investigator |
保坂 和彦 鎌倉女子大学, 児童学部・児童学科, 専任講師 (10360215)
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Keywords | チンパンジー / マハレ山塊国立公園 / 映像・音声資料 / 狩猟行動 / 音声エソグラム / コミュニケーション / 政治的相互作用 / 死体運搬行動 |
Research Abstract |
今年度は昨年度に引き続き、過去の調査において収録したマハレ山塊国立公園のチンパンジーのコミュニケーションに関する映像音声資料の整理・分析を中心に行った。 本研究課題の主たる目標の一つである「マハレのチンパンジーの音声エソグラムの作成」はまだ完了していないが、この作業と並行してチンパンジーの音声・非音声コミュニケーションと、そこから示唆される社会認知能力に関する分析を進めた。 たとえばチンパンジーは、樹上性霊長類を対象とする集団狩猟や、個体間の高度な政治的相互作用を行うことから、霊長類におけるマキャベリ的知性の研究対象として最も好都合である。このような集団行動を可能にする音声・非音声コミュニケーションに関して分析を進めている。 また、野生のチンパンジーが獲物の違いによって異なる狩猟戦術を採っているという仮説を検証する手法として音声資料を用いたプレイバック実験の実行可能性を検討している。この構想については、日本哺乳類学会2004年度大会自由集会「霊長類における種間関係」(東京農業大学厚木キャンパス、2004年10月)や第34回ホミニゼーション研究会「人類前夜の進化学」(京都大学霊長類研究所、2005年3月)における講演の内容の一部として論じた。 さらに、チンパンジーの母親が病死した乳児の死体を運搬する行動に関してビデオ資料を用いて分析した。この成果の一部は、第7回SAGA(アジア・アフリカに生きる大型類人猿を支援する集い)シンポジウム(京都大学百周年時計台記念館、2004年11月)において公表した。 最後に、昨年度同様、野生条件下のチンパンジーが行う音声行動のレパートリー及び機能的文脈を飼育条件下のチンパンジーのものと比較する点については、多摩動物公園のチンパンジーコロニーを対象に基礎資料の収集を継続した。
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