2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15780031
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
立木 美保 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構, 果樹研究所・生理機能部, 研究員 (10355381)
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Keywords | エチレン / エチレン受容体 / リンゴ / 1-MCP |
Research Abstract |
エチレンは果実の成熟・老化を促進させる作用を持ち、果実成熟機構において、最も重要な要因の一つである。1-MCPはエチレン受容体に作用する強力なエチレン作用阻害剤であるが、その効力が樹種によって異なると報告されており、本剤によるエチレン作用阻害について分子レベルでの解明が求められている。そこで、本研究では1-MCPの効用が樹種、品種間で異なる原因を解明するために、リンゴのエチレン受容体について解析した。 リンゴ果実から受容体遺伝子の単離を試みたところ、既に報告されていたMd-ETR1及びMd-ERS1に加え、新たにMd-ERS2を得た。収穫後貯蔵リンゴにおける受容体遺伝子の発現様式を解析したところ、Md-ERS1及びMd-ERS2は収穫後エチレン生成量の増加に伴い発現量が増大した。しかし、1-MCP処理果実では発現がほとんど検出されないことから、Md-ERS1、Md-ERS2はエチレンにより正の制御を受けていると考えられた。 抗Md-ERS1抗体を用いて、リンゴ果実から抽出した膜画分に対するウエスタンブロット解析の結果、エチレン生成量の増大に従って、Md-ERS1タンパク質の蓄積量が減少していた。一方、1-MCP処理によりエチレン受容体をブロックすると、mRNA発現量がほとんど検出されないのに対し、タンパク質は蓄積していた。 以上の結果よりエチレン受容体はエチレンと結合することでタンパク質が分解されると推測され、1-MCP処理によりエチレンとの結合が阻害されると、エチレン受容体は安定型となりエチレン情報伝達系を抑制し続けるため、エチレン反応を抑制することができると推測された。また、リンゴにおける1-MCP効果が高い理由として、1-MCP処理後、エチレン受容体タンパク質が安定であることが考えられた。
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