2003 Fiscal Year Annual Research Report
プロトプラスト再生系を利用した感染実験による菌類ウイルスの宿主範囲の検討
Project/Area Number |
15780037
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
兼松 聡子 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構, 果樹研究所・リンゴ研究部, 主任研究官 (40355433)
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Keywords | 菌類ウイルス / プロトプラスト |
Research Abstract |
白紋羽病は果樹の根に寄生して枯死に至らしめるため、果樹栽培において経済的被害が大きい難防除病害である。低環境負荷の本病防除法を開発するため、白紋羽病菌に感染して病原力低下効果をもたらす菌類ウイルスが探索され、いくつかのウイルスが見いだされた。本研究においては、これら白紋羽病菌から見いだされたウイルスの内、異なる科に属する2種について、白紋羽病菌以外の菌に対する感染注を検討することにより、これまでほとんど報告のない菌類ウイルスの宿主範囲について調査し、本来の宿主以外の他の植物病原菌に対する生物防除へ応用する可能性について探ることを目的とした。菌類ウイルスの伝搬は菌糸融合によるとされ、異なる菌種間でのウイルス移行は難しいが、菌の細胞壁を溶かしたプロトプラストの状態ではウイルスの導入が可能であるため、プロトプラスト化した菌に部分純化したウイルス粒子を感染させた。具体的には、白紋羽病菌W8株から見いだされたウイルス粒子であるW8VP(Partitiviridae)とW370株から見いだされたウイルス粒子W370VP(Reoviridae)を部分純化し、子のう菌類・殻菌綱・マメザヤタケ目に属する白紋羽病菌と子のう菌類・殻菌綱・ディアポルテ目に属するValsa ceratosperma,Cryphonectria parasitica,Diaporthe sp.G-typeをプロトプラスト化し、部分純化したW8VPとW370VPをPEG-CaCl_2法で感染させ、再生させた菌糸体中でのウイルス感染および増殖の有無を確認した。その結果、W8VPはディアポルテ目の3種菌に対して、すべて100%の感染率を示し、宿主範囲が広いことが推察された。一方W370VPは、ウイルスが見いだされたマメザヤタケ目の白紋羽病菌に対しては10%の感染率にとどまったが、ディアポルテ目の3種菌に対しては白紋羽病菌よりも高い感染率となった。この結果からW370VPが白紋羽病菌よりも他種菌において感染・増殖が有利である可能性が考えられ、菌類ウイルスの宿主範囲を考える上で興味深いとともに、生物防除資材として利用するための有益な知見となると思われる。
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