2003 Fiscal Year Annual Research Report
アワノメイガの分子生態学―2つのミトコンドリア系統は何を意味するのか?―
Project/Area Number |
15780038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
星崎 杉彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (10270894)
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Keywords | アワノメイガ / ミトコンドリアDNA |
Research Abstract |
日本,中国,フィリピン産の計167個体のアワノメイガより得られたCOII遺伝子塩基配列(682塩基対)の変異を詳細に解析した.その結果より系統AのミトコンドリアDNAは近年(進化上の時間スケールで)に分布地域・個体数を拡大したことが強く示唆されることを確認し,他方,系統BのミトコンドリアDNAにはそのような分布地域・個体数拡大の強い証拠がないことを確認した. アワノメイガ類の異なる種(アワノメイガ,アズキノメイガ,フキノメイガ,ゴボウノメイガ)より抽出したゲノムDNAをテンプレートとし,wingless遺伝子のコード領域の一部分(約400塩基対)を,PCR増幅し,ダイレクトシークエンス法により塩基配列を決定した.しかし,それらに塩基配列の差異が認められなかった.この結果より,アワノメイガにおいてwingless遺伝子のヨード領域は本研究の解析に充分な塩基配列多型をもたらさないものと示唆された. アワノメイガ類の異なる種(アワノメイガ,アズキノメイガ,オナモミノメイガ,ヨーロッパアワノメイガ,フキノメイガ,ゴボウノメイガ)より抽出したゲノムDNAをテンプレートとし,リボソームRNA遺伝子のInternal Transcribed Spacer(ITS)領域をPCR増幅し,ダイレクトシークエンス法にかけた.しかし,計20個体以上を検したものの,大半の個体に関して明瞭な塩基配列シグナルを得ることが出来なかった.ITS1,ITS2のいずれについても同様であった.結果より,アワノメイガ類昆虫の大半の個体において,ITS領域の個体内変異が存在するものと示唆された.ITS領域を本研究のマーカーとして利用するためには,ITS配列をクローニングして個体内配列に関する理解を深める必要がある.
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