2003 Fiscal Year Annual Research Report
高分子物質の結合と分解に関わるタンパク質・酵素の機能を規定する動的高次構造の解析
Project/Area Number |
15780053
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 渉 京都大学, 農学研究科, 助教授 (30273519)
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Keywords | スフィンゴモナス属細菌 / 高分子物質 / アルギン酸結合タンパク質 / アルギン酸リアーゼ / X線結晶構造解析 / 動的高次構造 / ドメイン開閉 / ループ開閉 |
Research Abstract |
スフィンゴモナス属細菌(A1株)において高分子物質(アルギン酸)の輸送に関わるアルギン酸結合タンパク質(AlgQ2)、及びアルギン酸の分解に関わるアルギン酸リアーゼ(A1-III)のX線結晶構造解析を行い、以下の知見を得た。AlgQ2は、α/βバレル構造を持つ2つのドメイン(N-,C-ドメイン)から成り、両ドメインの開閉(30度)を伴う分子運動によりアルギン酸の結合と解離を行う。これは、N-ドメインとC-ドメインとを結ぶ3本のループ(ループ1,2,3)の構造変化によってもたらされている。アポ型AlgQ2(アルギン酸非結合)においては、2本のループ1,2が水分子を介した水素結合によって安定化されているが、アルギン酸の結合に伴い、この水分子は排除される。この結果、ループ1はCドメイン内のループと新たに結合し、ドメインは閉じた構造に移行、安定化する。ドメイン間の開閉における水1分子の排除機構は、基質結合タンパク質では初めての知見である。A1-IIIは、新規なα_6/α_5バレル構造を有し、バレル中のトンネル状クレフトで触媒反応を行う。A1-IIIにおける基質結合と触媒作用は、活性部位上部に存在するリッドループの動的構造変化(25度)を伴う。リッドループ内に含まれるアミノ酸残基(G60,R67,Y68,Y80)に部位特異的変異を導入し、その酵素学的性質を調べた。全ての変異体は、野生型と比較して低い活性を示し、特に、R67A,Y68Fでは顕著であった。従って、A1-IIIの触媒反応には活性部位を覆うリッドループ内のアミノ酸残基も重要であることが明らかになった。今後、アルギン酸との複合体の精密な高次構造を決定することにより、AlgQ2及びA1-IIIにおける構造の,「揺らぎ」と機能発現との相関を明らかにする。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Osamu Miyake: "Origin and diversity of bacterial alginate lyases of families PL-5 and -7 in Sphingomonas sp. strain A1"Journal of Bacteriology. (印刷中). (2004)
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[Publications] Masayuki Yamasaki: "Crystallization and preliminary X-ray analysis of alginate lyase, a member of polysaccharide lyase family PL-7, from Pseudomonas aeruginosa"Acta Crystallographica setion D. 59. 1499-1501 (2003)
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[Publications] Yumiko Mishima: "Crystal structure of AlgQ2, a macromolecule (alginate)-binding protein of sphingomonas sp. A1, complexed with an alginate tetrasaccharide at 1.6-Å resolution"Journal of Biological Chemistry. 278(8). 6552-6559 (2003)
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[Publications] Wataru Hashimoto: "Crystal structure of Bacillus sp. GL1 xanthan lyase, which acts on the side chains of xanthan"Journal of Biological Chemistry. 278(9). 7663-7673 (2003)
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[Publications] Osamu Miyake: "An exotype alginate lyase in Sphingomonas sp. A1 : overexpression in Escherichia coli, purification, and characterization of alginate lyase IV (A1-IV)"Protein Expression and Purification. 29(1). 33-41 (2003)
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[Publications] 橋本 渉: "細菌における巨大分子利用の高次バイオシステム"バイオサイエンスとインダストリー. 61(4). 25-28 (2003)