Research Abstract |
本年度は,ヒラタケ族のきのこにhemolysin遺伝子が普遍的に存在かを確認するため,hemolysin遺伝子の検出を行った.また,種々のヒラタケ族きのこの菌糸を液体倍地で培養し,菌糸体抽出物および培養上清のhemolysin産生条件およびhemolysinの殺線虫活性に関する検討を行い微生物農薬としての利用の可能性について検討した. そのため,まず,hemolysin遺伝子の検出を行った.P.calyptatus, P.cornucoplae, P.cortiratus, P.cystidiosus P.eryngii, P.nebrodensis, P.ostreatus, P.pulmonarium, P.salmoneostramineusおよびP.ulmariusのゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った結果,全ての菌株でhemolysin遺伝子が検出できた.つぎに, hemolysinの生産性と分布を検討するため,GPY液体培地で培養した菌糸体の抽出液と培養濾液の溶血活性を測定したところ,P.eryngiiの菌糸体抽出液から最も高い溶血活性が検出できた.また,培養濾液には活性が無く,菌体内に含有されることが明らかになった.hemolysinの遺伝子の構造と発現機構を解析するため,最も高い溶血活性を示したP.eryngiiのhemolysin遺伝子の全塩基配列の決定を試みた.その結果,この遺伝子は138アミノ酸をコードし,1つのイントロンが挿入されていた.また,菌糸体および子実体でのmRNAの発現の検討のため,菌糸体および子実体から全RNAを抽出し,菌糸体RNAおよび子実体RNAを鋳型にRTPCRを行った.これまで, P.ostrea tusにおいて本遺伝子は子実体特異的に発現するとの報告に反して,P.eryngiiでは菌糸体でも発現が見られた.
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