2003 Fiscal Year Annual Research Report
培養細胞を用いたダイオキシンの腸管吸収検定系の構築と食品成分によるその制御
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15780095
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
薩 秀夫 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (80323484)
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Keywords | ダイオキシン / Caco-2 / HepG2 / CYP1A1 / ダイオキシン応答配列(XRE) / 腸管上皮細胞 / バイオアッセイ |
Research Abstract |
今日我々の身体は様々な環境汚染物質・化学有害物質に曝されており、中でもダイオキシン類は内分泌攪乱作用をはじめ様々な毒性を生体に示すことが知られ健康上の大きな脅威となっている。我々が日常的に摂取するダイオキシン類の90%は食品とともに経口から入るとされ、その生体への吸収をいかに制御するかが重要となる。そこで本研究では、ダイオキシン類を簡便に定量できるダイオキシン類の遺伝子発現制御機構を利用したバイオアッセイ系を作成し、これをダイオキシンの主たる吸収の場である腸管上皮細胞に応用することで、腸管におけるダイオキシン類の吸収・透過能を簡便に評価できるin vitro検定系を構築することを目的とした。 まず、ダイオキシン類の受容体であるAhR/Arnt複合体が結合する配列(Xenobiotics responsive element ; XRE)をタンデムに3つ並べたものを含むオリゴヌクレオチドを合成し、レポーター遺伝子(ホタルルシフェラーゼ)の5'-上流に結合させたベクターを構築した。このレポーターベクターをヒト肝由来HepG2細胞にリン酸カルシウム法にて一過的に導入した後TCDDを添加したところ、添加したTCDDの濃度依存的なルシフェラーゼ活性の増加がみられた。そこで次に、ヒト腸管由来Caco-2細胞を透過性膜上で培養し小腸上皮様に分化させた後、管腔側にTCDDを加え24時間後に基底膜側の培地を回収した。回収した培地を上記レポーターベクターを一過的に導入したHepG2細胞に加え、24時間培養した後ルシフェラーゼ活性を測定したところ、Caco-2に添加したTCDDの濃度依存的にルシフェラーゼ活性は増加した。これより、Caco-2細胞層を透過したTCDD量を検出することが可能となった。また、XREを3カ所含むことが知られるCYP1A1のプロモーター領域をレポーター遺伝子に接続したベクターをHepG2細胞にトランスフェクトし、薬剤選抜によって安定な高発現株(stable cell line)を樹立した。得られた細胞株にTCDDを添加したところ、一過的に遺伝子導入していた時に比べてより高感度にTCDDに対する応答みられ、再現性やばらつきなども大きく改善された。またCaco-2の管腔側にTCDDを添加した際の基底膜側の培地を安定な高発現株に添加した際にも、一過的な場合と比べ検出感度及び再現性が大きく向上した。以上より、ダイオキシン毒性発現機構を利用したバイオアッセイ系を用いてダイオキシンのCaco-2細胞透過量を定量的に評価することが可能となった。現在、上記構築した評価系を用いてダイオキシンの吸収を抑制する食品因子についての解析を進めている。
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