Research Abstract |
申請者は既に,幅広い環境条件に適応し,且つ実験室内での長期培養が可能な緑藻不稔性アナアオサをモデル海藻として,海藻の温度及び塩ストレス応答・適応機構の解明に取り組んでいる。これまでに,本藻種は水温20℃,海水濃度100%で最も良く生長すること,水温5〜30℃,海水濃度20〜180%の範囲で急激な変化を与えても適応・生存することを明らかにしている。本研究では,不稔性アナアオサが環境変化を認識して応答・適応するための一連の分子機構に関与する遺伝子を単離・同定するために,通常及び温度或いは塩ストレス条件下で培養した藻体間で発現遺伝子の比較解析を行った。 先ず,通常(水温20℃,海水濃度100%),高温(水温30℃,海水濃度100%),低温(水温5℃,海水濃度100%),高塩(水温20℃,海水濃度180%),低塩(水温20℃,海水濃度20%)条件で培養した藻体細胞の生理・生化学的変化を調べ,24hの温度及び塩ストレスにより種々の生体成分の含量が変化することを明らかにした。 次に,通常培養藻体,ならびに高温,低温,高塩,低塩条件で3及び24h処理した藻体のmRNAからcDNAを合成し,クロンテック社製PCR-Select cDNA Subtraction Kitを用いて,通常培養潔体及び各ストレスで3h処理した藻体間,通常培養藻体及び各ストレスで24h処理した藻体間,各ストレスで3h及び24h処理した藻体間でのcDNAサブトラクションを行った。さらに,各サブトラクション後のcDNA群をプラスミドベクターにサブクローン化した。 今後は,通常培養及び各ストレス処理藻体のmRNAをプローブとして,サブクローン化したcDNA断片群につきマクロアレイによる発現解析を行い,不稔性アナアオサの温度及び塩ストレス応答・適応に関与する遺伝子群を単離・同定する予定である。
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