2004 Fiscal Year Annual Research Report
養豚経営の事業多角化と企業グループ形成に関する研究
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15780145
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮田 剛志 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (70345180)
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Keywords | 豚肉の需給構造 / 企業的養豚経営 / 技術格差 / 費用の逓減 / 収益格差 |
Research Abstract |
事例調査を基に企業的養豚経営の今日的到達点について定性的分析を行った。これは、既存の統計の分析対象が、基本的には家族労働力主体の経営であり、そこに一部、臨時雇や常雇が導入された経営を扱っているため、今日形成されている大規模事業体の実態の多くについては、その分析の対象外となっているためである。今日、企業的養豚経営は、生産者、農協、農外資本の資本毎に設立されており、そこでは資本毎に特徴のある経営展開がみられた。ただし、このような資本の性格の差異に伴う経営展開も基本的には豚肉の需給構造の変化に規定された展開であった。そこでは、1970年代後半より既に交雑利用が進んでおり、また、その技術の安定化のための規模拡大、つまり、原種豚、F1生産部門の統合も進んでいた。加えて、1990年後半以降、これら企業的養豚経営で農場が新設される際は、「原種豚-F1-肉豚」が単位となっており、そこでの農場の規模も豚肉の需給構造の変化に規定されて大規模化していた。そこでは、必然的に高い資本装備や、作業分化の進展、1人当たり繁殖雌豚常時飼養頭数の多さがもたらされていた。さらに、近年設立された大規模農場では、繁殖雌豚1頭当たり出荷頭数や、出荷される肉豚の品質ともに高い技術水準が実現されていた。一方で、70年代に設立された今日では相対的に規模が小さくなっている農場では、統計分析から明らかとなる常雇を雇い入れた経営の技術問題が依然として顕在化していた。ただし、分娩回転数においては、いずれの農場においても繁殖雌豚の繁殖サイクル通りの回転数が実現していた。また、費用水準においても農場の大規模化に伴い低下傾向を示していた。このため、企業的養豚経営間では主としてこのような技術格差に基づく収益格差の存在が明らかとなった。 最後に、以上の分析結果を踏まえて今日の国内生産の動向の総括を行った。企業的経営では、かつて指摘されたような規模拡大過程における低収益構造の問題を克服し、費用収益構造において企業的発展を遂げている経営の実態も明らかとなってきている。このため、農家を含めた小規模経営では、豚肉の需給構造め変化と、それに伴う企業的経営との経営間競争だけでなく、小規模経営自体の収益性の低さ等の要因も加わって、ますます厳しい状況に陥っているのである。
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Research Products
(2 results)