2003 Fiscal Year Annual Research Report
流域水循環を考慮した水利調整ルールの策定・評価に関する基礎的研究
Project/Area Number |
15780156
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
松井 宏之 宇都宮大学, 農学部, 助手 (30292577)
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Keywords | 耐渇水性 / 渇水対応 / 配水方法 / アンケート調査 / 利根川水系 / 農業水利 / 農業用水 |
Research Abstract |
利根川水系の水利団体に対するアンケート調査結果をもとに,農業用水利水者の1)利水条件の把握,2)耐渇水性の類型化を行った.アンケートは大きく水利団体の規模,水利システム,渇水対応から構成され,想定した12渇水(不足率4通り×継続日数3通り)に対する厳しさを訊ねる問いが特徴となっている.まず1)の結果は大きく次の3つに整理される.(1)水利用の制約期・緩和期:制約期としてシロカキ・田植え期を挙げる回答が約9割,出穂期が約半数であった.一方,緩和期には6割強の団体が中干し期を挙げた.(2)渇水対応:節水の呼びかけが最も多く,地区全体での送配水量の調整,番水と続いた.全体での調整と比較して一部地区での調整を挙げる回答が少なかったことから,受益地区全体での水利用の公平性を重視した管理を行っている団体の多いことが推察された.(3)配水方法と渇水の影響が顕著な地区の関係:パイプラインの割合が増すに連れて,上流および全体に渇水の影響が出やすいとする回答が増加した.これはパイプラインによって,地区内の上下流の格差が均質化されているためと考えられた.次に2)の結果は大きく次の3つに整理される.(1)渇水被害関数の形状:一般に渇水被害は下に凸の関数で示されるが,今回の結果では上に凸となる団体が多かった.これは水管理者が渇水の規模ではなく,渇水状態に陥ることを警戒していることの表れと考えられた.(2)耐渇水性の類型およびその有意性:想定した12渇水に対する厳しさに対するクラスター分析により,制約期は4グループ,緩和期は5グループに分類された.この分類は,各渇水対応を始動する渇水強度との関係からも有意性が示唆された.(3)類型の地理的分布:利根川の右岸と左岸に大別でき,県別に見ると、栃木,群馬には耐渇水性が高い団体が多く、埼玉,千葉には耐渇水性が低い団体が多くなっていた.
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