2004 Fiscal Year Annual Research Report
家族性てんかんシェルティー犬における神経伝達物質の代謝に関する分子病理学的研究
Project/Area Number |
15780202
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
森田 剛仁 国立大学法人鳥取大学, 農学部, 助教授 (70273901)
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Keywords | てんかん / 神経伝達物質 / グルタミン酸 / グルタミン酸トランスポーター / イヌ / 遺伝性 / 特発性 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
本教室では、特発性前頭葉てんかん家系犬を維持しており、これまでのてんかん重責死亡例の大脳皮質における免疫組織化学的検索から、本家系犬の大脳皮質におけるグルタミン酸トランスポーターの陽性像の低下が認められ、グルタミン酸が細胞間隙に集積しやすい状態にある可能性が示唆された。しかし、本所見は発作重責による二次的変化の可能性がある。本研究では、発作未確認異常脳波検出例を用い、大脳におけるグルタミン酸代謝とてんかん発生との関連について、特にグルタミン酸トランスポーターに着目し、検討した。 [材料・方法] (1)脳波検査:家系犬5例(発作未確認、1y9m〜4y11m) (2)免疫組織化学的検索:家系犬5例および対照犬4例(2y4m〜4y7m)の大脳ホルマリン固定材料および以下の抗体を用いて実施した。グルタミン酸トランスポーター(GLT-1およびGLAST)、グルタミン合成酵素(GS)、Glial fibrillary acidic protein(GEAP)、グルタミン酸(Glu) (3)免疫電子顕微鏡学的検索:GLT-1 [結果および考察] (1)家系犬全例に異常脳波(鋭波)を検出した。異常脳波は、前頭葉で高振幅であり、後方へ向かうにつれて低振幅であった。また、左脳の方が右脳に比較し高振幅であった。 (2)抗GLT-1免疫組織化学において、左右大脳の脳溝周囲に限局した領域の皮質および視床外側腹側核に顆粒状陽性像の減弱を確認した。病変の分布および程度は脳波所見の特徴とほぼ一致しており、本所見とてんかん発生との関連が示唆された。抗GEAP、GSおよびGLAST免疫組織化学:いずれの抗体を用いた検索においても、家系犬と対照犬との間に陽性像の違いはなかった。また、連続切片を用いた検索により、GLT-1顆粒状陽性像の減弱領域のアストロサイトはこれら抗体に陽性であることが確認された。このことから、本家系犬のグルタミン酸代謝異常には、アストロサイトが有する機能のうちGLT-1のみが関連している可能性が考えられた。 (3)GLT-1に関する免疫電子顕微鏡的検索の結果、本家系犬のアストロサイトの細胞膜上にGLT-1の局在がほとんど認められないことが判明した。 今後はアストロサイトのGLT-1蛋白合成のどの過程に異常があるのか検討する必要がある。
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