2004 Fiscal Year Annual Research Report
固相担持型Mn(III)反応剤を用いる酸化的ラジカル環化反応の開発とその応用
Project/Area Number |
15790006
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
内山 正彦 金沢大学, 自然科学研究科, 助手 (40277265)
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Keywords | マンガン(III) / 固相担持 / グリーンケミストリー / 酸化的ラジカル環化 / 一電子酸化 / ヒドロキシル化 |
Research Abstract |
1.固相担持型Mn(III)反応剤の調製 まず、Mn(III)反応剤としてMn(OAc)_3・2H_2Oを、固相担体としてCOOH基を交換基とするイオン交換樹脂であるAmberlite IRP-64 [100-400 mesh,〜10 meq/g(dry)]を用い、固相担持型Mn(III)反応剤の調製を試みた。すなわち、窒素雰囲気下、Mn(OAc)_3・2H_2O(1.07g,4mmol)のエタノール溶液にAmberliteIRP-64(1.0g)を加え、室温にて42時間撹拌した後、吸引ろ取した。次に、ろ取した樹脂をエタノール、つづいてヘキサンで洗浄した後、真空乾燥して赤褐色の樹脂を得た。原料として用いたMn(OAc)_3・2H_2Oはエタノールに溶解するが、この手法で処理した後の樹脂はエタノール中で撹拌してもMn(III)特有の赤色が全く溶出してくることがなかったことから、用いたMn(OAc)_3・2H_2Oは、ほぼ定量的にAmberlite IRP-64に担持されたものと推測された。 2.固相担持型Mn(III)反応剤を用いた酸化的ラジカル環化反応の検討 上記の方法で調製した樹脂を用い、実際にラジカル環化反応を試みた。研究実施計画に基づき、分子内にアルキン部を有しβ位にメチル基が1つ置換された鎖状β-ケトエステルを基質として用い、エタノール中、調製した樹脂とともに撹拌したところ、予想に反してラジカル環化はほとんど進行せず、5-exo環化体と6-endo環化体が合わせてもわずか6%の収率でしか得られず、その代わりに主生成物として基質の活性メチンがヒドロキシル化されたアルコール体が29%の収率で得られた。触媒量のMn(OAc)_2・4H_2Oを用い酸素雰囲気下で環状β-ケトエステルを反応させると同様の反応が起こることが既に知られているが、鎖状β-ケトエステルではうまくいかなかったと報告されていることから、本研究で得られた結果は興味深い。さらに、触媒量の樹脂を用い酸素雰囲気下で反応を行った場合にもこのヒドロキシル化反応は進行し、また反応後の後処理は、1)樹脂のろ去、2)ろ液の濃縮、3)カラム精製のみであることもこの樹脂を用いる大きな利点である。一方、本来の目的であった酸化的ラジカル環化反応に関しては、わずかながらではあるが環化反応が進行したことから、反応条件の更なる検討、用いる固相担体の修飾などによって改善される可能性が示唆された。
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