2004 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子NFκB阻害薬害による新しいアポトーシス誘導機序に関する研究
Project/Area Number |
15790100
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
渡部 正彦 帝京大学, 医学部, 助手 (90301788)
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Keywords | アポトーシス / 転写因子 / 癌 |
Research Abstract |
転写因子NF-κBは、細胞死シグナルを回避するために重要な蛋白合成に関与し、細胞の生存・維持にとり必須蛋白である。しかし、細胞増殖が盛んな癌細胞の中には正常細胞と較べ、このNF-κBの転写活性が異常に高いものがある。従って、この転写因子を標的とした癌治療薬の可能性が考えられる。蜂蜜中に含まれる成分の一つであるカフェイン酸フェネチルエステルは、この転写因子NF-κBの阻害作用を有することが明らかとなった。本研究では、カフェイン酸フェネチルエステル(CAPE)が癌細胞を死滅させる機構を明らかにし、臨床応用の理論的基礎を構築することを目的とした。 ヒト乳癌MCF-7細胞に対してCAPEを処理すると、時間および濃度依存的にアポトーシスが誘導された。この過程において、アポトーシス抑制因子の一つであるXIAPの発現抑制とアポトーシス誘導因子の一つであるBaxタンパク質の発現誘導が認められた。このBaxタンパク質の発現誘導は細胞の形態変化を起こしている細胞に特異的に観察された。更にBaxタンパク質の下流で機能すると考えられるCaspase-9を阻害するとCAPEによるアポトーシス誘導が抑制された。このことからCAPEはBaxタンパク質の発現誘導を引き起こしCaspase-9を活性化してアポトーシスを誘導することが示された。このアポトーシスが本当にNF-κBの活性阻害のみに起因して引き起こされているか否かを確かめるために、NF-κBの活性を特異的に阻害するIκBΔNを細胞内に強制発現させその影響を調べた。その結果、細胞内にIκBΔNを発現させると、CAPE同様Baxタンパク質の発現誘導を引き起こしCaspase-9を活性化してアポトーシスを誘導した。以上の結果から、CAPEにより引き起こされるアポトーシスはNF-κBの活性阻害のみに起因しており、NF-κBの活性が阻害されるとBaxタンパク質の発現誘導が引き起こり、Caspase-9が活性化してアポトーシスが誘導されることが示された。
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Research Products
(1 results)