2004 Fiscal Year Annual Research Report
内耳機能における内向き整流K^+チャネルの分子生物学的・生理的解析
Project/Area Number |
15790134
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
日比野 浩 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70314317)
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Keywords | 内向き整流K^+チャネル / 内耳蝸牛 / 内耳高電位 / K^+循環 / 螺旋靱帯 / 線維芽細胞 |
Research Abstract |
聴覚は人や動物にとって不可欠な感覚である。音情報を受容するため高度に分化した器官が内耳蝸牛である。蝸牛は内リンパ液という特殊な液体で満たされている。それは細胞外液であるにも関わらず、約150mMのK^+イオンを含んでおり、電位は約+80mVと非常に高い(内耳高電位)。内リンパ液には、聴覚一次受容器である有毛細胞の感覚毛が触れている。音刺激により内リンパ液のK^+イオンは有毛細胞へ流入し、細胞を興奮させるが、内耳高電位はK^+イオン流入のdriving forceを増大し、音に対する高感受性を形成している。よって、内耳高電位は、聴覚機能にとって必須である。以前より内リンパ液の高K^+・高電位の成立には、蝸牛側壁の、螺旋靱帯と呼ばれる線維芽細胞群や血管状と呼ばれる上皮細胞群に分布する、K^+チャネルを介したK^+イオン動態が深く関わっているとされてきたが、その役割や分子実体は、未だ大部分が不明である。本研究では、K^+チャネルの分子レベルでの同定と生理的機能の解明を目的にした。我々は以前に、内向き整流性K^+チャネルKir4.1が血管状に発現し、側壁を介したK^+イオンの循環を促進させ、高電位の成立に必須であることを報告していた。更に昨年度、別のK^+チャネルKir5.1が、螺旋靱帯の特殊な線維芽細胞に局在していることを明らかにし、K^+イオンの循環を負に制御している可能性を見出した。本年度は、Kir5.1の蝸牛における生理機能を解析する目的で、ノックアウトマウスの作成を開始し、ヘテロマウスを得ることができた。また、新たにK^+イオン循環を制御するトランスポーター分子も見出しつつある。内耳蝸牛のK^+イオンの循環は、Kir4.1、Kir5.1、トランスポーター等のイオン輸送体によって、精密に制御されており、それにより内リンパ液の高K^+・高電位が恒常的に保たれているということが明らかとなった。
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Research Products
(4 results)