2004 Fiscal Year Annual Research Report
血管内膜肥厚におけるMAPキナーゼ経路の役割に関する研究
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15790138
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
泉 康雄 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (10347495)
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Keywords | 血管リモデリング / 細胞内シグナル伝達系 / MAPキナーゼ / 血管新生 / アポトーシス / ノックアウトマウス / 炎症 |
Research Abstract |
小動物を用いて、血管リモデリングにおけるapoptosis signal-regulating kinase 1(ASK1)の役割について検討した。まず、ラット総頸動脈に対して血管傷害モデルを作成し、傷害後の血管内膜肥厚におけるASK1の役割について検討した。ASK1活性は血管傷害直後に劇的な一過性の増加を認めた。そこで、ASK1のドミナントネガティブミュータント(DN-ASK1)を作成し、in vivoで遺伝子導入を行ってASK1の活性を直接阻害することにより、血管傷害後の血管内膜肥厚は有意に抑制された。また、血管平滑筋細胞を単離・培養してその機序を調べた。ASK1の下流に存在するp38およびJNK活性は血清等の刺激による著明に増加するが、この活性増加はDN-ASK1の遺伝子導入により有意に抑制された。血清刺激による平滑筋細胞の増殖および遊走の亢進はDN-ASK1により有意に抑制されていることがわかった。 ASK1遺伝子欠損マウスを用いて、血管リモデリングにおけるASK1の役割をさらに詳細に検討した。野生型マウスとASK1遺伝子欠損マウスそれぞれから単離・培養した平滑筋細胞を用いて、その性質を比較検討した。血清刺激による平滑筋細胞の増殖および遊走は、野生型マウスと比べてASK1遺伝子欠損マウスで有意に減弱していた。さらに、in vivoで血管傷害後の内膜肥厚を比較したところ、ASK1遺伝子欠損マウスでは野生型マウスに比べて内膜肥厚が有意に抑制されていた。 以上より、ASK1は平滑筋細胞の増殖・遊走を介して血管障害後の新生内膜肥厚を促進していることがわかった。ASK1は将来的に血管リモデリングを抑制するための標的遺伝子の一つとなる可能性がある。また、ASK1は炎症にも関連しており、血管リモデリングの一つである血管新生にも重要な役割を演じている可能性が考えらる。
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