2004 Fiscal Year Annual Research Report
細胞癌化を媒介する活性酸素産生酵素Nox1による情報戦たつ機構の解明
Project/Area Number |
15790149
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
篠原 正浩 信州大学, 医学部, 助手 (60345733)
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Keywords | Ras / NADPH oxidase 1 / 活性酸素 / Transformation / Rho |
Research Abstract |
活性化型Rasにより癌化した細胞において活性酸素産生酵素Nox1の発現をRNAi法で抑制したところ、細胞形態の変化が見られたことを手がかりに、細胞形態を制御する低分子量GTP結合タンパク質Rhoの活性酸素による活性調節機構を明らかにすることとした。まず、活性酸素の一つである過酸化水素で刺激した細胞内において、Rho活性の顕著な抑制が見られた。Nox1を過剰発現している大腸癌由来細胞において、Nox1の活性化を促すとやはりRho活性の抑制が起こることを確認した。Nox1の阻害剤や抗酸化剤、Nox1発現抑制によりRho活性の回復が見られることから、Nox1の産生する活性酸素が確かにRho活性を抑制していることが確認された。また、この大腸癌由来細胞においては上皮細胞増殖因子EGF刺激によりRho活性の抑制が観察されるが、この過程においてもNox1が関与していることを示した。さらに分子レベルでの活性酸素によるRho活性抑制メカニズムについては、RhoGTPase活性化因子の一つであるp190RhoGAPが重要な働きを担っているものと考えられる。p190RhoGAPはEGF刺激に応じて分子内チロシンリン酸化されることによりその活性を上昇させるが、Nox1発現抑制された大腸癌由来細胞内ではチロシンリン酸化が認められなかった。さらにNox1活性化依存的にp190RhoGAPと結合する新規チロシンリン酸化タンパク質を見いだし、p190RhoGAP内に存在するプロリンに富む配列を介して結合することを明らかにした。これらNox1によるRho活性の抑制はRas癌化細胞においても認められ、アクチン細胞骨格の変化による細胞形態変化をもたらすことでRasによる細胞癌化に非常に重要な役割を果たしていることを示した。
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